研究課題/領域番号 |
21K07166
|
研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
夏目 誠治 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 研究員 (10813280)
|
研究分担者 |
細田 和貴 愛知県がんセンター(研究所), がん情報・対策研究分野, 研究員 (00728412)
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
谷 眞至 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60236677)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 肝転移 / 高肝転移性細胞株 / PDXモデル / プロテオミクス / 細胞表面タンパク質 |
研究実績の概要 |
大腸癌肝転移に対する最も有効な治療法は手術による切除であるが、根治的切除が可能であった症例においても、5年生存率は約40%と難治である。ゲノム解析技術の目覚ましい発展にもかかわらず、分子標的治療の大腸癌肝転移への貢献は限定的であり、革新的なアプローチによって大腸癌肝転移の克服に取り組む必要がある。 本研究では、マウス大腸癌細胞株からin vivo selectionにより樹立した高肝転移性亜株・低転移性亜株(in vitroモデル)と、外科手術時に採取された大腸癌原発巣と肝転移巣から作成した患者腫瘍組織移植(PDX)モデル(in vivoモデル)を用いて、細胞表面タンパク質に重点を置いた網羅的な空間プロテオーム解析を行う。これにより、大腸癌肝転移の分子機構を解明するとともに、大腸癌肝転移巣に特徴的な細胞表面タンパク質分子を同定し、大腸癌肝転移を制御するための新規分子標的治療法を開発する。 今年度は、マウス大腸癌細胞株から樹立した高肝転移性亜株と低転移性亜株において、空間プロテオーム解析とRNAシーケンス解析が完了し、肝転移に関連する分子シグネチャを同定した。また、大腸癌原発巣、肝転移巣から作成したPDX腫瘍それぞれ12症例について、空間プロテオーム解析とRNAシーケンス解析が完了し、現在データ解析を進めている。 今後は、マウス大腸癌細胞株の解析から同定した、肝転移分子シグネチャに含まれる分子について機能解析を行うと共に、大腸癌原発巣・肝転移巣由来PDX腫瘍について多層オミクス解析を完了し、肝転移に重要な新規治療標的分子を探索同定する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、大腸癌肝転移巣15例、原発巣39例からの患者腫瘍組織移植(PDX)モデルを作成した。このうち5症例においては、原発巣と肝転移巣のペアとして作成できた。また、肝転移巣9例から患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立している。原発巣、肝転移巣各12症例(うちペア4症例)から得られたPDX腫瘍について、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析が完了し、現在データ解析を進めている。また、マウスCT26大腸癌細胞株においては、低転移性亜株(CT26-N5)に比べ、高肝転移性亜株(CT26-L6)は高い遊走・浸潤能を獲得していた。両亜株において、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析を行い、肝転移に関連する分子シグネチャを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
マウス大腸癌細胞株の分子プロファイルの比較から同定した肝転移分子シグネチャに含まれる分子について、市販のヒト大腸癌細胞株または患者腫瘍由来細胞株(PDC)を用いて機能解析を行う。また、PDXモデルの作成を継続するとともに、原発巣と肝転移巣PDX腫瘍の多層オミクスプロファイルを比較し、肝転移形成にかかわる新規治療標的分子を同定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、プロテオーム解析計画にずれが生じたため、次年度使用額が生じた。解析計画を修正し、今年度使用する予定である。
|