研究課題
大腸癌肝転移に対する最も有効な治療法は手術による切除であるが、根治的切除が可能であった症例においても、5年生存率は約40%と難治である。ゲノム解析技術の目覚ましい発展にもかかわらず、分子標的治療の大腸癌肝転移への貢献は限定的であり、革新的なアプローチによって大腸癌肝転移の克服に取り組む必要がある。本研究では、マウス大腸癌細胞株からin vivo selectionにより樹立した異なる転移能を持つ亜株と、外科手術時に採取された大腸癌原発巣と肝転移巣から作成した患者腫瘍組織移植(PDX)モデルを用いて多層オミクス解析を行い、転移性大腸癌の制御法開発を目指した。現在までに、大腸癌原発巣73例、肝転移巣29例からPDXモデルを作成した。このうち5症例においては、原発巣と肝転移巣のペアとして作成できた。さらに34症例において患者腫瘍由来細胞株(Patient-derived cells; PDC)を樹立した。マウス大腸癌高肝転移性亜株・低転移性亜株の多層オミクス解析データと、大腸癌原発巣・肝転移巣由来PDX腫瘍の多層オミクス解析データから、肝転移分子シグネチャを同定し、肝転移分子シグネチャを構成する一群の転移関連分子について、現在機能解析を行っている。また、同様にin vivo selectionで樹立した高腹膜転移亜株において、アクチン結合タンパク質AVILが転移能を亢進させることを明らかにした。さらに、AVILはIFN/JAK/STATシグナルによって制御されること、下流の分子としてチロシンフォスファターゼがAVILに結合して細胞極性を制御していることを見出した。
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