前年度の解析によって、少なくともラットの肝発がん初期においてはソラフェニブやレンバチニブの肝がん治療薬を自己血小板に内包させてDDSとして利用することによって、治療効果が得られることが明らかとなった。本年度は、更に進行した肝がんモデルにおいて治療効果を確認するためのモデル作成が主な課題であった。これまで用いてきたラット化学発癌モデルに 形成された肝腫瘍組織からがん細胞を分離培養し、細胞を樹立することに成功した。しかしながら、この細胞株をラットに移植しても全身転移する肝がんモデルとはならなかった。そのため、代替手段としてすでに樹立された市販のラット肝がん細胞株を用いた移植肝がんモデルの作成に成功した。次年度以降にこのモデルを用いて、血小板を利用したDDSの治療効果を確認する。 また、正常の個体と担がん個体の血小板の生物学的特性の違いについても解析を行った。具体的には、正常ラット、肝がんラットそれぞれの血小板からRNAを抽出しRNA sequencingにより内包される遺伝子産物の量的変化から特性の違いにつて推察を行った。その結果、肝がんラット由来の血小板には正常ラットの血小板と比較して、リボソーム蛋白質をコードしているRNAが多く含まれていくことが明らかとなった。このことは肝がんラット由来の血小板は正常と比較して強いタンパク合成能を有していることが示唆される。次年度はこのことをさらに深く追求する研究を行う。
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