研究課題/領域番号 |
21K07177
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
原田 守 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (50260716)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん細胞 / 細胞死 / 細胞老化 / 老化細胞除去薬 / p21 |
研究実績の概要 |
1)薬剤による細胞老化の誘導には p21Cip1/Waf1と p16Ink4a が深く関与してることが知られている。また、ヒト乳がん MDA-MB-231細胞とMCF-7細胞は p16 Ink4a 欠損細胞であった。そこで、CRISPR/Cas9 法を用いて、p21と p16 を欠損した乳がん細胞株の樹立を試みたが成功しなかった。そこで、p21 siRNAを用いてp21をknockdown することにより実験を継続した。その結果、p21をknockdownしなくてもMDA-MB-231細胞では細胞老化が誘導され、老化細胞除去薬である ABT-263(navitoclax) により効率的に細胞死が誘導されることを確認した。この効果は、MDA-MB-231細胞をヌードマウスに移植した異種移植モデルでも確認された。一方、MCF-7細胞に関しては、p21 の発現をsiRNAでknockdownすることによりABT-263に対する感受性が高まった。さらに、public database を利用してp21の発現が乳がん患者の予後に影響するかを検討したところ、抗がん化学療法を受けていないがん患者ではp21の発現が高いと予後が悪かった。2)BALB/cマウスの系ではCT26大腸がん細胞、B6マウスの系ではMC38大腸がん細胞から CRIPER/Cas9 法を用いて、p21Cip1/Waf1をKO したがん細胞株 (CT26-KOp21, MC38-KOp21) を樹立している (これらの細胞の p16Ink4a の発現は極めて低い)。これらの細胞を用いて、がん特異的キラーT細胞に対する感受性の変化を調べたが、明らかな違いは観察されなかった。一方で、同系マウスに皮下接種した場合、p21をknockoutされているCT26とMC38は半分のマウスでがんが拒絶された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒト乳がん MDA-MB-231細胞とMCF-7細胞を用いた廊下細胞の誘導と老化細胞除去薬に対する感受性について、MDA-MB-231細胞では、p21の発現に関係なく老化の誘導に伴いp21の発現が低下することにより老化細胞除去薬により細胞死が誘導された。一方、MCF-7細胞に関しては、p21 siRNAを用いてp21をknockdown した場合に細胞死が誘導されやすいことを明らかにした。これらの結果を論文にしCancer Medicineに発表した。さらに、この結果が乳がん以外のがん腫に当てはまるかを、ヒト肺がん細胞株を用いて検討するために、A549細胞からCRISPR/Cas9 法を用いて、p21と p16 を欠損した肺がん細胞株 (A549-KOp21) を樹立した。さらに、A549-KOp21細胞にp21を再発現させた細胞株も樹立した。一方、parental A549 細胞にp21をoverexpression させた細胞株も樹立した。2)p21Cip1/Waf1をKO したがん細胞株 (CT26-KOp21, MC38-KOp21) に関しては現時点では明らかな差異を認めなかった。しかし、同系マウスに皮下接種した場合、p21をknockoutされているCT26とMC38は半分のマウスでがんが拒絶された。
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今後の研究の推進方策 |
1)A549細胞からCRISPR/Cas9 法を用いて、p21と p16 を欠損した肺がん細胞株を樹立した。さらに、A549-KOp21細胞にp21を再発現させた細胞株も樹立し、また、parental A549 細胞にp21をoverexpression させた細胞株も樹立した。今後、これらのp21の発現が異なるA549細胞を用いて、in vitro とin vivo での増殖・細胞誘導の感受性などを建都する予定である。2)p21Cip1/Waf1をKO したがん細胞株 (CT26-KOp21, MC38-KOp21) に関して、どうしてp21をknockoutされたマウス大腸がんのin vivoでの増殖が抑制されたのか背景にある機序の解明を進める。
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