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2022 年度 実施状況報告書

mTORC構成因子Tel2を標的とする新規マクロライド系Wnt経路阻害薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K07182
研究機関岩手医科大学

研究代表者

西谷 直之  岩手医科大学, 薬学部, 教授 (10286867)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードWnt / 阻害剤 / mTOR / ゼブラフィッシュ
研究実績の概要

申請者らは、マクロライド系薬剤であるイベルメクチンによるWnt/beta-cateninシグナル経路への阻害作用が、mTOR複合体の構成因子であるTELO2への結合を介することを見出した。これは、新たな機序で作用するがん治療戦略として魅力的であるが、同薬剤の過量投与はGABA様の中枢抑制作用等の副作用を起こす。本研究では、「イベルメクチンの誘導体化によって、Wnt/beta-catenin経路阻害作用の増強と中枢抑制作用の軽減を両立できる。」という仮説をたて、TELO2を介したWnt/beta-catenin経路阻害薬のリード化合物の創成を目的とする。
昨年度の構造活性相関研究の結果、高活性かつ低毒性のイベルメクチン誘導体の合成が可能であるという結論に至った。2022年度は、イベルメクチンの副作用の1つであるGABA様の中枢抑制作用を完全に排除するための誘導体化を進めた。GABA様作用に関連するベンゾフラン環構造を改変した誘導体にも、Wnt/beta-catenin経路阻害活性が残存することを昨年度までに明らかにしていた。今年度は改変をさらに進め、ベンゾフラン環構造を完全に失った類縁体についても活性を評価した。Wnt/beta-catenin経路を人為的に増強したゼブラフィッシュ胚の眼形成不全の表現型を正常に回復するか評価したところ、これらの部分構造のみを有する類縁体にも同経路に対する阻害活性が維持されることを明らかにした。また、哺乳類細胞を用いたレポーターアッセイでも、Wnt3aによって引き起こされるbeta-catenin/TCF依存的転写活性化をこれらの部分構造類縁体が阻害できた。その一方で、活性強度については元化合物のイベルメクチンより劣るため、昨年度に明らかにした活性増強官能基の導入などによる誘導体化が必要と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

イベルメクチンの中枢抑制作用に関わる構造を完全に失った部分構造にもWnt/beta-catenin経路阻害活性が維持されることを見出した。本研究の目的である「イベルメクチンの誘導体化によって、Wnt/beta-catenin経路阻害作用の増強と中枢抑制作用の軽減を両立できる。」という仮説の検証の上で非常に大きな進展であった。部分構造類縁体はイベルメクチンの3分の2程度の分子量に縮小されたため、合成が容易になり、誘導体の多様化が期待できる。また、次年度の動物実験用の大量合成にも有利である。低毒性誘導体の作用増強は進行中であるため、KDの算出は保留している。一方で、2023年度に行う予定の動物実験の準備は前倒しして行っている。おおむね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

Wnt経路が過剰活性化したApcMin/+マウスにデキストラン硫酸ナトリウムを飲水投与し、大腸腫瘍モデルを作成し、部分構造類縁体のin vivo効果を評価する。また、部分構造類縁体のGABA様中枢抑制作用の消失についても、単回大量投与とGABA阻害薬誘発性の痙攣を抑制する効果が減弱するかイベルメクチンと比較する。

次年度使用額が生じた理由

納入価割引のため、237円の残額が生じた。次年度に有効利用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [学会発表] PIKKs安定化因子TELO2はイベルメクチンによるWnt/β-catenin経路阻害作用を仲介する2023

    • 著者名/発表者名
      米澤穂波、池田朱里、高橋 亮、廣瀬友靖、岩月正人、砂塚敏明、上原至雅、西谷直之
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] 新規創薬標的分子TELO2を介したイベルメクチンによるWnt/β-catenin経路阻害作用の解析2022

    • 著者名/発表者名
      米澤穂波、氏家悠貴、上原至雅、西谷直之
    • 学会等名
      第26回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] TELO2へのイベルメクチンの結合はPI3K関連キナーゼ機能を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      西谷直之、米澤穂波、氏家悠貴、上原至雅
    • 学会等名
      第26回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] Targeting of TELO2 suppresses functions of PI3K-related kinases and the Wnt/β-catenin pathway.2022

    • 著者名/発表者名
      西谷直之、米澤穂波、氏家悠貴、上原至雅
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Ivermectin-binding to TELO2 mediates the Wnt/beta-catenin signaling suppression by ivermectin.2022

    • 著者名/発表者名
      米澤穂波、氏家悠貴、上原至雅、西谷直之
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [備考] 抗寄生虫薬イベルメクチンによる抗がん作用を仲介するヒト細胞内標的分子の発見

    • URL

      https://www.iwate-med.ac.jp/news/n5-research/22030801-soumu/

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公開日: 2023-12-25  

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