研究課題/領域番号 |
21K07185
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
谷岡 洋亮 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40775491)
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研究分担者 |
永坂 岳司 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30452569)
岡脇 誠 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40509254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃癌 / 薬物療法 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
切除不能進行再発胃癌(mGC)では、Immune-checkpoint-blockade (ICB)と殺細胞剤併用療法が1st-lineで使用可能となる。この流れは、他の分子標的薬と同じであり、EGFR-blockadeに示されているように、獲得耐性やre-challenge投与の可否といった検証が行われることが推測される。しかしながら、それらを規定可能な明確なbiomarkerは存在しない。ICBによる抗腫瘍効果はT細胞に依存しており、T細胞は抗原曝露によりNaive →Effector →Exhaustedという3つのstageを経ることが知られている(T cell stage)。PD1は抗原暴露された瞬間から発現し、Effector stageではICBによるPD1 blockは奏功するが、Exhausted stageでは、ICB不応となる。この事実は、反対にT細胞のstageを同定できれば、ICBの奏功を推測することが可能となると考えられる。本研究では、mGC患者のICB投与前血液を対象に、このT cell stagingによるICB predictive biomarkerの構築を試みる。2022年5月の時点で胃癌薬物療法を施行した切除進行再発胃癌患者22名の治療前後の血液サンプルのFACSによるリンパ球分画の解析およびCD3+CD8+PD1+/CD3+CD8+PD1-/CD3+CD4+ PD1+/CD3+CD4+PD1-のリンパ球の分離を行った。そのうち12例が、Immune-checkpoint-blockade(ICB)投与前後のリンパ球分画の検討が可能であった。12例のICBメインターゲットであるCD8陽性T細胞中のPD1陽性細胞の割合は投与前が30%であり、投与後は17%と減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年5月の時点で胃癌薬物療法を施行した切除進行再発胃癌患者22名の治療前後の血液サンプルのFACSによるリンパ球分画の解析およびCD3+CD8+PD1+/CD3+CD8+PD1-/CD3+CD4+ PD1+/CD3+CD4+PD1-のリンパ球の分離を行った。そのうち12例が、Immune-checkpoint-blockade(ICB)投与前後のリンパ球分画の検討が可能であった。12例のICBメインターゲットであるCD8陽性T細胞中のPD1陽性細胞の割合は投与前が30%であり、投与後は17%と減少していた。 このことはICBの投与が末梢血中のCytotoxic T lymphocyte (CTL)に何らかの影響を与えていることが考えられる。近年、胃癌におけるICBのバイオマーカーとしてはtumor infiltrating lymphocyteの免疫担当細胞の割合やPD1の発現などが注目されているが、ICB投与前の組織採取は必ずしも容易ではない。我々は末梢血中のリンパ球解析および、最終的にはcell-free DNA中のIFNγ/TBX21/PD1/TCF7/CCR7 DMR methylation patternを検出することによる実用性の高いバイオマーカーの構築を目指す。今後は、ICB投与前に分離されたリンパ球を用い、IFNγ/TBX21/PD1/TCF7/CCR7 DMR methylation patternによるTcell stagingの検討およびcell-free DNA中DMR methylation patternの検出とその相関関係を検証し、併せて抗腫瘍効果との関連を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌薬物療法を施行した切除進行再発胃癌患者の治療前後の血液サンプルから得られたCD3+CD8+PD1+/CD3+CD8+PD1-/CD3+CD4+ PD1+/CD3+CD4+PD1-リンパ球からDNAを抽出しIFNγ/TBX21/PD1/TCF7/CCR7 DMR methylation patternの検討を行う予定である。尚、IFNγ/TBX21/PD1/TCF7/CCR7 DMR methylation patternの検出技術の最適化はほぼ終了している。リンパ球DNAとcell-free DNAにおけるDMR methylation patternの相関関係も検討し、cell-free DNAのみでTcell staging可能かどうかも併せて検討する。また、本研究では、多施設共同観察研究「切除不能進行・再発胃癌患者の二次化学療法中における末梢神経障害を中心とした副作用と薬剤効果を検討する多施設共同観察研究(IVY Study,UMIN000033376)」から得られる200例の二次治療前後の血液に対しても同様の検査を行い、臨床データとの照合解析を進めていく予定である。
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