研究課題
大腸癌の10%-15%は、ミスマッチ修復機構の破綻を原因とするマイクロサテライト不安定性(MSI)を示す。MSI大腸癌は、Lynch症候群に関連した大腸癌や散発性MSI大腸癌に大別されるが、近年、ミスマッチ修復遺伝子の後天的な異常を起因とするLynch-like症候群が新たなサブタイプとして提唱されている。本研究では、Lynch-like症候群を他のMSI大腸癌と比較し、その臨床病理学的特性を明らかにすることを目的とした。研究は2008年1月から2019年11月にかけて、当院で原発巣の切除を受けた2634名の大腸癌患者を対象とした。MSI検査を用いたユニバーサルスクリーニング(UTS)の結果、146人(5.5%)がMSI大腸癌であり、この内30名(1.1%)がLynch症候群と診断され、19名(0.7%)をLynch-like症候群と診断した。MSI大腸癌のサブタイプ同士を比較した結果、Lynch-like症候群は若年患者に多く、左側大腸に位置し、<i>KRAS</i>の活性型バリアントがみられる一方で全例<i>BRAF</i>野生型であった。また、Lynch-like症候群は散発性MSI大腸癌よりも改訂ベセスダガイドライン(rBG)に高い合致率を示したが、Lynch症候群関連腫瘍の発生頻度はLynch症候群よりも低かった。Lynch-like症候群とLynch症候群に発生した大腸癌の臨床病理学的因子には有意差はなかったが、Lynch-like症候群はLynch症候群に比べてLynch症候群関連腫瘍の発生頻度が低かった。本研究は、Lynch-like症候群の臨床的特徴をLynch症候群および散発性MSI大腸癌と比較し、Lynch-like症候群の診断とサーベイランスに関する異なる方法が必要であることを示した。
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International Journal of Clinical Oncology
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10.1007/s10147-024-02527-x