研究課題/領域番号 |
21K07189
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任准教授 (30589924)
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研究分担者 |
加藤 達哉 北海道大学, 大学病院, 教授 (20624232)
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
畑中 佳奈子 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (10399834)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CD73/NT5E / 赤外光線免疫療法 / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
がん微小環境において,低酸素状態下ではATPからAMPを介しアデノシンを生成する CD39/CD73カスケード分子の発現が誘導され,さらにアデノシンはリンパ球上のA2受容体を介して免疫抑制状態を誘導することから,免疫チェックポイント阻害(ICI)療法に対し抵抗性を示す. 本研究は,先行研究として実施した非小細胞肺癌(NSCLC)の一部でCD73発現が亢進し,またPD-L1発現と相関する点に着目し,(a) NSCLC組織検体を用いたCD73およびPD-L1発現と腫瘍微小環境との関連性について検討し,次いで(b) ヒトおよびマウス肺癌細胞株を用いたCD73-IR700-Cのがん細胞への集積確認と治療効果のin vitro評価,および(c) ヒトおよびマウス肺癌細胞株の移植腫瘍モデルを用いたCD73抗体-IR700結合体(CD73-IR700-C)の腫瘍集積性の確認および近赤外線免疫療法(NIR-PIT)の抗腫瘍効果のin vivo評価を行う. 本年度は以下の課題に取り組んだ.肺扁平上皮癌症例を用いた組織マイクロアレイ(TMA)標本123例を用いた低酸素関連タンパクの臨床病理学的検討:CD73,PD-L1およびHIF-1a発現について検討したところ,先行研究同様,CD73とPD-L1発現間に有意な関連性(p=0.019)が認められ,またCD73とHIF-1a発現間にも関連傾向(p=0.0548)が観察された.これら3分子の生存解析においては,低発現群に比べ高発現群で,それぞれ有意な無再発生存期間(RFS)の短縮が認められ,さらにCD73高発現/HIF-1a高発現群ではさらに短縮した(p=0.0187).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究目的の達成のため,1年目にあたる令和3年度は,当初の予定通り,肺扁平上皮癌症例の組織マイクロアレイ(TMA)標本を用いて,CD73およびPD-L1と腫瘍微小環境の臨床病理学的関係性について検討した.低酸素関連タンパクであるHIF-1aについては検討が完了しものの,免疫微小環境に関する検討は,完了できなかったことから今年度の研究の進捗については,自己点検による評価の区分を(3)とした.
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる令和4年度においては,以下の2点について検討する. ①昨年度に続き,肺扁平上皮癌症例を用いたCD73と免疫微小環境間の臨床病理学的検討を進める. ②当初の予定通りヒトおよびマウス肺癌細胞株を用いたCD73-IR700-Cのがん細胞への集積確認と治療効果のin vitro評価を行う
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次年度使用額が生じた理由 |
上記CD73と免疫微小環境間の臨床病理学的検討の実施に遅延が発生し,これを次年度に行うこととしたため,翌年度に一部使用額が生じた.
本年度同様,次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している.【物品費】臨床病理学的検討用試薬を購入する予定である.一方,設備備品費は,研究代表者が所属する部門に主要な研究設備が整っており,新たな設備備品の購入は考えていない.【旅費】使用予定はない.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している.研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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