研究課題/領域番号 |
21K07196
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
古嶋 昭博 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (20161903)
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研究分担者 |
野口 和浩 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90578816)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | astatine-211イメージング / γ線・X線シンチレーションイメージング / 固体シンチレータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、α線やβ線核種による画像診断と治療の融合(theranostics)研究を支援するために、治療用に生体内へ投与される放射性核種自身による治療効果の評価を可能にする小動物リアルタイムin vivoイメージングの技術開発を行うことである。これまで申請者が行ってきたβ線用のチェレンコフ光イメージング(以下、CLI)、γ線・X線用のシンチレーションイメージング(以下、SI)、さらにβ線とγ線・X線用のCLI-SIハイブリッド光イメージング(HLI)技術を本研究に適用する。 当該年度では、最近、α線標的内用療法として国内外で注目されているアスタチン211 (At-211) 研究の基礎的イメージング実験を行った。まず、At-211はβ線を出さないためにCLIは困難であるため、申請者がこれまで行ってきた固体シンチレータを用いたSIによりAt-211から出る低エネルギーX線(80-90keV)と高エネルギーγ線(570-900keV)の両方に着目して、それらのイメージング特性について調べた。その結果、低ネルギーX線はシンチレータ厚を1mmから1.5mmにすると僅かに検出効率および解像力が高くなった。一方、高エネルギーγ線は低エネルギーX線に比べて検出効率は1/10以下になり、解像力も低下した。さらに、悪い解像力を改善するためには、固体シンチレータを可能な限り放射線源に接近させることが有効であることが明らかとなった。 今回の研究により、At-211は、高エネルギーγ線に比べてより放出割合が大きく、かつ検出効率が高い低ネルギーX線に対するSIは有効であり、体厚の小さなマウスでは固体シンチレータを密着させることができるために解像力向上も期待でき、高額な小動物SPECTシステムよりも、リアルタイムに簡便・短時間でAt-211イメージングへの可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に不可欠なイメージング装置であり、放射線管理区域でのみ使用できる蛍光・発光イメージングシステムによる実際の放射性核種を用いた初年度計画の実験が困難であったために、3年間で予定している研究実施計画の2年目にあたる当該年度においてその研究を実施したが、当初計画に遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主目的は、市販の高感度CCD蛍光・発光イメージングシステムを用いて、小動物を対象としたβ線によるチェレンコフ光イメージング(CLI)やγ線・X線によるシンチレーションイメージング(SI)、さらにCLIとSIを併用したハイブリッド光イメージング(HLI)が、α線やβ線核種による核医学治療における画像診断と治療の融合(theranostics)の基礎研究に貢献できるようなイメージング技術として開発可能かを明らかにすることである。 本研究の2年目にあたる当該年度において、初年度で実施が困難であった核種を用いた基礎研究ができ、RI内用療法に有効なα線核種として注目されているAt-211のイメージング化がSIにより可能であることがわかった。 従って、研究最終年度にあたる次年度(令和5年度)では、At-211のイメージング化に必要なX線とγ線エネルギーを持つ核種を用いて、SI技術のさらなる最適化とマウスを模擬したファントムや生きた動物による有効性の評価などを行う
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の初年度(令和3年度)の実施計画が予定通りにできなかったために、高額な核種の購入を断念し、未使用分の助成金が発生した。さらに当該年度(令和4年度)においては、申請者が平行して行っている本研究に関連した科研費 基盤研究C(課題番号18K07270)により購入した核種を一部使用することができたために入手する必要がなくなり、令和3年度分と合わせて未使用額が生じた。また、当該研究に必要な国内外での情報収集や学会参加出張が新型コロナウイルスの影響により遂行できなかったために当初旅費予算を執行できなかった。 この当該年度未使用額を次年度に繰り越し、次年度(令和5年度)配分額と併せた予算で、当該年度計画未実施分と新たな計画追加分、および次年度計画実施分の予算として円滑な執行に努める。
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