研究課題/領域番号 |
21K07203
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 進 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70518422)
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研究分担者 |
シバスンダラン カルナン 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30557096)
小川 徹也 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40334940)
土本 純 愛知医科大学, 付置研究所, 助教 (70632868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CTL / Treg / M2マクロファージ / CAF / TGF-b / RNAscope |
研究実績の概要 |
1. 細胞障害性T細胞(CTL)の機能に及ぼすTGF-b,免疫抑制細胞(Treg, M2マクロファージ(M2φ), CAFの直接的影響;健常人末梢血単核球から樹立したサイトメガロウイルス(CMV)pp65抗原に対するCTL(CMV-CTL)と、疑似がん抗原としてCMVpp65を強制発現させた口腔がん由来細胞株HSC3とTGF-b又はTreg存在下、共培養した。TGF-b 存在下において、CMV-CTLの増殖、細胞障害活性、IFN-g,TNF-aの産生は著しく低下したが、TGF-b阻害剤によってほぼ完全に回復した。TGF-bが抗原特異的刺激に対するCTLの応答性を著しく阻害することが明らかとなった。Treg存在下においてもCTL増殖が抑制され、TGF-b阻害剤によって増殖の回復を見た。Treg採取量が限定的であり、Tregによるその他の機能に対する直接的影響は検討できなかった。M2φ, CAFとの共培養においても、CTLに対する直接的影響について検討したが、抑制効果はみられず、むしろ増殖を亢進した。 2. がん組織におけるTGF-bの発現と免疫抑制環境の形成における役割;口腔がん組織におけるmRNAの発現をRNAscopeで検討した。がん組織侵襲先端のがん細胞内で強く発現することが示された。TGF-b発現細胞として、Tregや、CAFなど間質系細胞が知られているが、今回の検討では、むしろ、がん細胞の関与が高いことを示していた。また、TGF-b の発現量と、Ki-67+CD8+T細胞浸潤数及びCD8+T細胞/Treg比との間に有意な逆相関がみられた。この結果は1.のin vitroの結果を反映しているものと考えられた。
以上の結果は、がん組織内の免疫抑制環境の形成にTGF-bが強く関わっており、TGF-bの阻害が、がん組織内免疫環境の改善をもたらすものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度研究目標である、in vitroにおける、TGF-bのCTLに与える直接的影響について概ね検討できた。また、免疫抑制細胞(Treg, M2φ, CAF)が与える影響についても、一部検討が終了し、研究の進展を2年度につなぐことができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究で、TGF-bが、直接CTLの機能に影響を与えることが明らかとなった。これを受け、CTL表面に発現するTGF-b受容体下流の情報伝達にかかわる分子、経路及び最終的な標的分子の同定を行い、TGF-bによるCTL機能阻害機序の全体像について検討する。 1. TGF-b刺激により発現が変動するCTL内分子の遺伝子発現アレイによる網羅的探索;末梢血単核球から分離したCD8+T細胞をTGF-b存在下、あるいは非存在下、CD3抗体で活性化させ、2日間培養後、発現が変動する分子を探索する。CTL機能の抑制に関連性の強い分子についてはqPCRや、ウエスタンブロット等で発現の変動について確認する。 2. TOF-MS (SCIEX社ZenoTOF) を用いたリン酸化分子の網羅的探索;1.と同様にCD8+T細胞をTGF-bで刺激後、リン酸化分子を網羅的に解析し、TGF-b受容体下流の情報伝達経路について検討する。 以上の検討により、TGF-bによるCTLの機能抑制を緩和するのに有効な標的分子、経路を明らかとし、T細胞情報伝達経路を標的とした新たな、免疫賦活剤の開発につなげる。
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