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2022 年度 実施状況報告書

KRAS阻害剤の耐性機序の解明及びその克服治療についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K07204
研究機関近畿大学

研究代表者

米阪 仁雄  近畿大学, 医学部, 准教授 (30330260)

研究分担者 寺村 岳士  近畿大学, 大学病院, 准教授 (40460901)
鈴木 慎一郎  近畿大学, 大学病院, 助教 (60823614)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードKRAS / ソトラシブ / EGFR / PTPRR
研究実績の概要

KRAS阻害剤ソトラシブ(AMG510)の耐性機序の解明、さらに耐性克服治療の開発につなげることを目的に本研究を継続している。第一にKRAS変異陽性肺癌細胞株H23を用いたソトラシブ耐性株の樹立、及び耐性機序の解明、耐性克服治療の研究を進めた。結果、cMET遺伝子増幅が耐性の原因であることを同定した。そしてcMET阻害剤クリゾチニブとの併用によりソトラシブ耐性が克服できることを前臨床試験で確認できた。
第二にKRAS変異陽性肺癌細胞株H2122を用いてソトラシブ耐性株を樹立。次世代シークエンサーによる遺伝子解析ではcMETを含めた二次的遺伝子変異を認めず。一方で同耐性株では親株と比べEGFRのリン酸化が亢進していた。このため耐性株を用いたin vitro薬剤感受性試験を行ったところ、EGFR阻害剤セツキシマブとソトラシブの相乗効果を認めた。さらにin vivoでの感受性試験においても両剤の併用はそれぞれの単剤投与と比べ、有意に腫瘍縮小効果を示した。
次にマイクロアレイによる発現解析を行ったところ、親株と比べ耐性株では脱リン酸化酵素であるPTPRR遺伝子の顕著な発現低下を認めた。免疫沈降実験ではPTPRR蛋白はEGFRと結合し、EGFRの脱リン酸化をもたらすことが確認できた。従ってソトラシブ耐性細胞株ではPTPRR遺伝子発現低下がEGFRの2次的な活性化をもたらし、ソトラシブ耐性の原因となっていると考えた。
続いてPTPRR遺伝子のメチル化解析を行った。耐性細胞株のPTPRR遺伝子の一部のプロモーター領域では(親株と比べ)脱リン酸化がみられた。現在、脱リン酸化された同プロモーター領域に遺伝子発現抑制因子の結合が亢進していることを確認中である。また臨床での腫瘍サンプルを用いてPTPRR遺伝子の脱リン酸化について評価を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

すでに先行するcMETに依存したソトラシブ耐性研究は論文化している(Suzuki S, Yonesaka K, et al. Clin Cancer Research2021)。追加でのEGFR/PTPRR依存的な耐性研究も順調に進んでおり、前臨床試験の結果について国内での特許申請も終えている。今後の臨床検体を用いた研究に向け、倫理委員会での承認も取得済み。臨床検体を用いた遺伝子のメチル化の測定をバイサルファイト法で行う計画で、同測定も問題なく行えることを確認した。本研究に協力を頂く各施設より臨床検体・臨床情報を回収中であり、順次測定を進めていく予定である。

今後の研究の推進方策

EGFR/PTPRR依存的なソトラシブ耐性研究は、ここまで細胞株を用いておこなってきた。今後は、実臨床での耐性克服治療への応用を目指し、臨床検体を用いた研究も進めてゆく。臨床ではソトラシブ耐性獲得後の腫瘍組織の入手は容易ではなく、腫瘍組織だけでなく血中cfDNAも用いた研究も検討したい。将来の臨床での耐性克服治療への橋渡しとなることを念頭に研究を進める。また研究論文の執筆にもとりかかっており、今年度中の論文投稿・発表を目指し進めている。

次年度使用額が生じた理由

新たに樹立したソトラシブ耐性株H2122ARでPTPRR遺伝子メチル化異常を認め、耐性の原因と考えられた。今後臨床検体を用いてPTPRR遺伝子についてメチル化解析等を行う。このため次年度に予算を持ち越したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] MET遺伝子増幅に依存した KRAS G12C遺伝子変異を有する非小細胞肺癌のRASあるいは非RASシグナルを介したKRAS阻害剤への耐性2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 慎一郎、米阪 仁雄、坂井 和子、西尾 和人、中川 和彦
    • 学会等名
      日本がん分子標的治療学会
  • [学会発表] KRAS inhibitor-resistance in MET-amplified KRAS G12C non-small cell lung cancer2022

    • 著者名/発表者名
      Shinichiro Suzuki, Kimio Yonesaka, Junko Tanizaki, Hisato Kawakami, Hidetoshi Hayashi, Kazuko Sakai, Kazuto Nishio, Kazuhiko Nakagawa
    • 学会等名
      日本癌学会
  • [産業財産権] 癌治療用組成物2022

    • 発明者名
      米阪仁雄、中川和彦、寺村岳士
    • 権利者名
      米阪仁雄、中川和彦、寺村岳士
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2023-003798

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公開日: 2023-12-25  

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