最終年度は、① 限界希釈によるシングルセル化として、樹立済みPDOを限界希釈して 96 ウエルでオルガノイド培養した。翌日、顕微鏡下でシングルセルとなっているウエルに印をつけ、今後は印のあるウエルの拡大培養を試みた。各株、100 クローン以上取得した。 ② 樹立済みPDO とシングルセルPDO の病理学的解析と遺伝学的解析として、甲状腺分化癌マーカーであるサイログロブリンと pax 8 および、多くの甲状腺未分化癌で亢進されていることが知られている ki67 と p53 の免疫染色を行った。また、特徴的な遺伝子変異の有無を所属する施設が保有する遺伝子パネル(51種類の癌遺伝子変異が解析できる)で評価した。 このようにして樹立したシングルセルPDOに対して、いくつかの抗がん剤を投与して、薬剤応答性を調べたところ、クローン間で、応答性にバラツキが生じた。しかしながら、このような薬物応答性と遺伝子変異の有無が必ずしも一致しているわけではなかった。 最後に、生検検体からのシングルセルPDOを以下の手順で実施した。 検体の1/3 を病理解析、1/3 を凍結保存し、残りをオルガノイド培養に使用した。これまでに申請者が確立した樹立方法を基にシングルセルPDOの樹立を行った。具体的には、1型と4型コラーゲン分解酵素処理とトリプシン処理を数日に分けて複数回行うことで、組織塊から細胞のシングル化を試みた。赤血球は溶血バッファーを用いて除去するが、その他の正常細胞も含まれるため、多くのシングルセルカルチャーを作成したところ、検体によっては線維芽細胞の増殖が多く困難であったが、あったが、工夫をすることで改善された。
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