研究課題
がんを対象とする新規治療用抗体開発現場では、がん細胞表面で特異に発現する標的分子 の枯渇が大きな課題となっている。T細胞受容体(TCR)のエピトープであるペプチド/ヒト白 血球抗原複合体(pHLA)に対して高い特異性と親和性で結合する「T細胞受容体様抗体 (TCRm-Ab)」は、従来の抗体療法では対象とできなかった細胞内がん抗原を標的化でき るとして期待されている。しかしHLAには多数の多形が存在するため、従来のTCRm-Ab ではHLA型が一致する患者にしか適用できないという課題があった。最近、MHC class I-related protein (MR1)と呼ばれる単形性の主要組織適合性抗原(MHC)分子が、がん細胞内で特異的に 生成される代謝物由来のリガンドを抗原提示し、この抗原を認識するT細胞(MR1T)は、様々 ながん細胞を除去できる事が報告された。そこで本研究では、この抗原分子に着目し、本分子を認識するTCRm-Abを多数単離することで、広範ながん患者に対して共通して利用可能 な、治療用TCRm-Abの開発を目指し研究を行っている。本研究では免疫抗原用ならびにリガンドの構造解析用に、MR1T細胞によって認識されることが既に分かっているがん細胞株から、X-MR1分子の大量精製することを目指しているが、本年度はその第1段階としてまずHEK293細胞を用いたMR1遺伝子の強制発現系の確立を行った。
3: やや遅れている
MR1遺伝子の発現系確立に時間を要したため、HEK293細胞を用いた発現確認に留まった。次年度は、がん細胞を用いた発現系の構築を計画している。
HEK293細胞において、外来性MR1分子の発現を確認できたことから、次年度はがん細胞で外来性MR1分子の発現を行い、研究計画に沿って研究を行う予定である。
合成遺伝子、合成MHCタンパク質、細胞株ならびに種々のプラスチック容器等について海外のメーカーからの購入を予定していたが、コロナの影響で外国からの輸入に時間を要す事が判明したため、次年度にこれらの購入を繰り越すこととなったため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
PLOS ONE
巻: 16 ページ: e0248027
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