本研究は、急性骨髄性白血病(AML)において高頻度に変異が認められるNPM1.1を標的とした、エクソンスキップ療法の確立を目指したものである。AMLにおけるNPM1.1遺伝子の変異はエクソン12内に限定的である。このタイプのAML細胞の生存が、変異型NPM1の存在に依存することから、エクソン12の使用を回避し、代替的にエクソン10の使用するNPM1.3の発現へと誘導できれば、AMLの細胞死につながることが期待された。 本研究の1年目は、NPM1のmini geneを用いてNPM1.1とNPM1.3のスプライシング比率を定量化する方法を確立した。これにより、mini gene由来および内在性由来それぞれについて、NPM1.1、NPM1.3 mRNAレベルを分別定量するすることが可能となった。この方法論に基づいて、NPM1 Exon7-12を含むmini gene(約11kb)におけるNPM1.1とNPM1.3のスプライシング比率が概ね内在性のものと同等となることを確認した。2年目は、変異型mini geneを用いて、NPM1.3の発現(Exon10の使用)に影響を与える領域が広範に及ぶこと、さらにExon10の中にExon10の選択を抑制する領域(d12と命名)を見出した。 最終年度は、HeLa細胞にd12領域に対するアンチセンスモルフォリノオリゴを導入し、抑制の解除によりExon10の使用が促進されるかを検討した。その結果、アンチセンスモルフォリノオリゴによりNPM1.3mRNAの の発現レベルが上昇したものの、タンパク質レベルでは変化が認められなかった。これに対し、NPM1.1はmRNA、タンパク質レベルのいずれも変化しなかった。そこでIntron10を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、物理的な切断を試みたが、現在までのところ標的部位の切断には至っていない。
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