研究実績の概要 |
Homeobox only protein X (HOPX) のプロモータ領域DNAメチル化による発現抑制が,甲状腺乳頭癌をはじめ,乳癌,消化器癌で癌特異的でありかつ高頻度に生じており癌の悪性予後に関わっていることを報告してきた (Neoplasia 2012, Cancer Letters 2017, Oncotarget 2019). 甲状腺乳頭癌根治切除施行症例においてHOPX高メチル化は独立再発予測因子であった.stage I症例では既存の高リスク因子に関わらず,低メチル化が劇的に良性予後に関わっており,低リスク患者選択に有用となるの可能性がある.甲状腺乳頭癌での検討では,HOPXメチル化値は HOPX蛋白発現よりもより鋭敏に予後を反映していたため,HOPXメチル化値がより潜在性のあるマーカーと考えた.TCGAデータベースにおいて HOPXは甲状腺濾胞細胞の分化と関連する遺伝子群(eg. CDH6, LAMC2)と相関し,脱分化と関連する遺伝子群(eg. HHEX, ERBB4)と逆相関しており,HOPXメチル化は甲状腺乳頭癌の未分化転化に関連している可能性がある.また,HOPXメチル化により腫瘍間質の細胞に変化がみとめられており,免疫細胞との関わりが示唆されたため,現在腫瘍関連マクロファージや免疫抑制細胞,リンパ球の動員との関連を解析している. 北里大学IRB承認 (#B17-233) の下,まず甲状腺濾胞癌のHOPX DNAメチル化の意義について解析した.手術検体の病理診断にて甲状腺濾胞癌と診断された47例と,比較良性検体として濾胞腺腫32例,腺腫様結節31例を用いた.術前に濾胞癌の診断可能性を探るための研究であり,正常甲状腺組織を対象とはしなかった. HOPXメチル化値は甲状腺濾胞癌においてやや高い傾向にはあったが,統計学的に優位ではなかった(p=0.085).
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