研究課題/領域番号 |
21K07227
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
藤澤 聡郎 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (50627346)
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研究分担者 |
伊佐山 浩通 順天堂大学, 医学部, 教授 (70376458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IL-13Rα2 / 膵癌 / 術前化学療法 / Gemcitabine / EUS-FNA / 浸潤 / 転移 / 代謝経路 |
研究実績の概要 |
我々は膵癌手術検体でのIL-13Rα2の発現を評価し、膵癌細胞におけるIL-13Rα2の発現が高い群では予後が悪いことを突き止め、報告している(Cancers. 2020 May 20;12(5):1294.)。前年度までの検討でEUS-FNAで得られた生検検体を用いてIL-13Rα2の発現が化学療法に与える影響を検討し、Gemcitabine-baseの化学療法を行った症例でIL-13Rα2の高発現群で有意に抗癌剤に対する反応が悪いことを見出した。さらにIL-13Rα2が抗癌剤耐性を誘導する機序を検討し、IL-13Rα2がGemcitabineの腫瘍細胞内での代謝経路(hENT1,dCKなど)を調節している可能性や膵臓癌の内部血管とIL-13Rα2と相関を調べたところIL-13Rα2高発現群で腫瘍内部の血管量が有意に減少していることを見出した。また、膵癌の切除標本においてIL-13Rα2の発現を詳細に検討したところ、総じて腫瘍の中心部より辺縁に向かうほどIL-13Rα2の発現が徐々に増強していき、浸潤のFront部分は最も発現が高くなっていることを見出した。更に切除標本からmRNAを抽出し、IL-13Rα2の高発現群と低発現群で浸潤・転移に関連する遺伝子発現の違いを網羅的に解析したところ、いくつかの因子がIL-13Rα2の発現と強い相関を示すことを見出した。この解析によって得られた因子がIL-13Rα2による浸潤・転移の促進と深い関連があると考え、それぞれ因子とのの相互作用を現在検討しているところである。現在切除可能な膵癌においても術前化学療法が必須になっている。EUS-FNAで得られた検体でIL-13Rα2の発現を前向きに診断し、IL-13Rα2の発現量により術前化学療法のレジメン、投与期間を変更することにより術後の再発率を低減する試みを進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの検討で膵癌においてIL-13Rα2が抗癌剤の効果を左右することが明らかとなっており、その機序も徐々に解明されてきた。本年度はこれまでの検討で得られた知見を臨床にFeedbackし術前化学療法の効果を増強し、術後の再発を抑制しうるかを検討する段階まで至っているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ研究は順調に進んでおり、このまま当初の予定通り検討を継続する。 具体的には網羅的解析にて得られた結果から、IL-13Rα2に関連のある因子を絞り込んであり、それらの因子とIL-13Rα2との相互関係を検討する。また、EUS-FNAで得られた検体においてIL-13Rα2の発現を迅速に解析し、その発現量に応じて化学療法の種類と量を選択する臨床試験を計画している。この試みにより膵癌の術後再発を減らすことを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で国際学会等での発表ができなかったため。 本年度に動物実験など費用が掛かる研究を予定しているため。
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