研究課題/領域番号 |
21K07237
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐藤 勉 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (40404602)
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研究分担者 |
和田 暁法 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (60775922)
菊地 尚平 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (80515792)
神原 悠輔 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10624421)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DPP8 / DPP9 / Hck / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
ジペプチジルペプチダーゼ(Dipeptidyl peptidase:DPP)はタンパク質分解酵素であり、N末端から2番目のアミノ酸がプロリンもしくはアラニンであるペプチドから、加水分解によりN末端2個のアミノ酸を取り除く。DPPのファミリーにはDPP4やDPP8、DPP9などが属し、それぞれに基質特異性があるため、治療の標的として優れている。例えばDPP4に対する特異的な阻害剤は糖尿病治療薬として既に広く使用されている。我々は、(1)DPP8とDPP9の両者を阻害する1G244が血液悪性腫瘍に対する抗がん剤活性を有すること、および(2)その活性はDPP8の阻害を介するカスパーゼ3の活性化が担うことを明らかにした。その後、1G244から構造展開してDPP8に特異性を高めた12mが、より優れた抗がん剤活性を有することをin vitroで明らかにした。また、12m高感受性の細胞株は造血細胞キナーゼ(Hematopoietic cell kinase:Hck)を高発現することを見出した。これは、Lck、Lyn、Fyn、BlkそしてFgrなどと同様に、Src familyに属するtyrosine kinaseのひとつである。本研究では、12mの毒性と抗がん剤活性をin vivoで検討し、血液悪性腫瘍に対する優れた分子標的薬となるのか検証する。また、HckがDPP8を介するアポトーシスシグナルに関与するのか、そして治療効果を予測するバイオマーカーになるのか検証する。本研究の成果は、新規DPP8阻害剤を用いた血液悪性腫瘍の治療開発のみならずDPP8が関与する生命現象のシグナル解明にも貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hckを含めたSrc familyの発現と12m感受性との関連を検討した。細胞株の選定にはCancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)のデータを用いた。すなわちCCLEから血液悪性腫瘍の細胞株に関するデータを抽出し、Hck高発現の細胞株および低発現の細胞株をピックアップした。これらの細胞株に12mを添加して感受性を検討するのと同時に、ウエスタンブロットでHck、Lck、Lyn、Fyn、BlkそしてFgrなどの発現を検討した。次に、Hckを高発現する細胞株にはHckのノックダウンを、Hckを低発現する細胞株にはHckの強制発現を行なって、12mに対する感受性の変化を検討した。なお、ノックダウンにはMISSION shRNA(Sigma-Aldrich)のレンチウイルスを、強制発現にはApplied Biological Materialsのレンチウイルスライブラリーを用いた。その結果、HckがDPP8を介するアポトーシスシグナルに関与すること、そして治療効果を予測するバイオマーカーになることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
発展的検討事項として、DPP8がHckや関連分子を切断するのか、もしくはDPP8がそれらと結合するのかについて調べる。
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