研究課題/領域番号 |
21K07246
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
王寺 典子 (下嶋典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
|
研究分担者 |
伊藤 利洋 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00595712)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | HLA-F / antibody / immunotherapy / PDX / SCID / SCID-beige / tumor |
研究実績の概要 |
ヒト白血球抗原(Human leukocyte antigen、HLA)-Fは多型性に乏しいHLA クラスIb分子の一つで、抑制性のkiller cell Immunoglobulin like receptor (KIR)と会合し、NK細胞、T細胞の細胞傷害活性を抑制する。我々は、HLA-Fが腫瘍細胞に発現し、特に低分化・未分化癌に高発現することをすでに見出している。このことから、悪性腫瘍に高発現するHLA-Fは、抑制性KIRを介してNK細胞・T細胞を抑制することにより、腫瘍増悪化に寄与しているのではないかと考え、HLA-Fのブロッキングにより腫瘍免疫活性化が期待できると考えた。さらに腫瘍細胞からHLA-Fが放出されていれば腫瘍悪性度を判断する診断マーカーとなる可能性もあり、HLA-Fを標的とした新規癌免疫療法および新規診断マーカー開発を目的として本研究を行った。 今年度は、患者由来腫瘍細胞を用いた固形癌マウスモデルの作成を中心に行った。SCIDマウスおよびSCID-beigeマウスに現在保有する患者由来腫瘍細胞7種をそれぞれ移植して、患者由来の腫瘍マウスモデルの作成を行った。7種のうち5種の患者由来大腸癌細胞がSCIDマウスおよびSCID-beigeマウスに生着し、固形癌マウスモデルを作製できた。生着した腫瘍細胞にはHLA-Fが発現していることをフローサイトメトリーと免疫組織染色で確認した。また、各マウスに生着した患者由来大腸癌細胞のストックを行い、さらにこのストックしたマウス生着患者由来大腸癌細胞の再使用ができることも確認した。5種のマウス生着患者由来大腸癌細胞のうち、SCIDマウスおよびSCID-beigeマウスにおいて同程度の腫瘍サイズを形成する患者由来細胞を2種選び、現在、HLA-F抗体投与時のHLA-Fブロッキング効果の作用機序を検証する実験を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、7種の患者由来大腸癌細胞を保有している。これらのうち5種類がSCIDマウス、SCID-beigeマウスに生着可能で、固形癌を形成することを確認している。このうち、HLA-Fブロッキングによる抗腫瘍効果検証に有用な患者由来大腸癌細胞を2種類選定し、患者由来の大腸癌細胞を使用したSCIDマウス、SCID-beigeマウス固形癌モデルの作製はおおむね順調に進んでいると考えている。 一方、in vitro、in vivoの抗腫瘍効果検証に使用予定のNK細胞株(TALL104、NKL)の維持が想定通りにいかず、現在、他の細胞株、あるいは臨床検体などの使用を模索しており、HLA-Fブロッキングによる抗腫瘍効果の機序検証に関するin vitro、in vivo実験が遅れている。 以上のことから、進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
患者由来大腸癌細胞のSCIDマウス、SCID-beigeマウスの固形癌モデルが作製できているので、今年度は、抗HLA-F抗体を投与してHLA-Fブロッキングによる抗腫瘍効果の検証を行う。具体的には、SCIDマウス、SCID-beigeマウス固形癌モデルのそれぞれに、抗HLA-F抗体を投与し、腫瘍サイズ、体重変化などを経時的に観察する。SCIDマウス、SCID-beigeマウス固形癌モデルの比較から、NK細胞の抗体依存性細胞傷害活性による抗腫瘍効果について検討する。併せて病理学的な解析を行い、抗HLA-F抗体投与による腫瘍細胞の変化についても検証する。 エフェクター細胞については、使用する細胞株の変更を含め、できるだけ早期に確実に入手可能な細胞を選択し、in vitroおよびin vivoにおけるHLA-Fブロッキングによる抗腫瘍効果の機序解析に着手する。
|