研究課題
本研究はCDKN2A遺伝子のバリアントを作成し、機能評価系を構築しがんゲノム医療における意義不明バリアントの解釈に役立つ情報を集積することにある。第一に細胞内に野生型のCDKN2A cDNAを発現することが必要である。リファレンス配列として一般的に用いられているのはReqSeq IDがNM_000077.5の配列であり、Primer3を用いてその部分を増幅するプライマーを設計した。野生型CDKN2A cDNAは購入することもできるが、今後他の遺伝子に関しても同様に機能評価系を構築する構想があるために、健常人のリンパ球からmRNAを抽出し、RT-PCRにより増幅したcDNAをベクターに組み込み、サンガーシークエンスにて、配列を確認することとした。増幅した断片をBamHIとNotIにより切断し、ヒト細胞株用のCMVベクターであるpcDNA3.1に挿入した。サンガーシークエンスは外部委託により行い正常配列であることを確認した。そのフラグメントを, 出芽酵母用のpRS315, ヒト細胞株用のエピソーマルベクターであるpCAGs-MCSに移した。部位特異的バリアント導入は出芽酵母の細胞内で行い、実際の機能評価は細胞株でエピソーマルプラスミドを用いて行う。部位特異的バリアント導入のためには、ギャップベクターが必要であり、インバースPCRのためのプライマーを合成し、5’側、3’側を25bp程度残してcDNAの中心部分ほとんどを欠失したギャップベクターを作成した。今後、バリアント導入のためのプライマーを合成し、ClinVurに登録されているCDKN2A cDNAのバリアントを作成してプールする。
3: やや遅れている
研究はやや遅れ気味である。当研究室は病院業務を兼任する臨床系の教室であるがスタッフが3名しかおらず、診療や臨床実習などの教育を行うとかなり時間を取られるため、研究の時間が十分とれないのが問題である。東北医科薬科大学は医学部設立後、第一期の卒業生が出るまでは試行錯誤の上、教育に関する新たな業務が追加される状況であったが、本年度一期生の卒業を迎え今後は教育プログラムもルーチン化して安定すると考えられる。今後はもう少し安定したエフォートの分配が可能と考えている。研究棟の必要物品や試薬はほぼ整備され、研究を推進する環境はほぼ出来上がってきたといえる。
今後はまず作成した野生型CDKN2A遺伝子発現プラスミドが正しく機能することを証明する必要がある。すなわち、ヒト神経膠芽腫細胞U87MG細胞をATCCから購入し、エピゾーマルベクターに組み込んだ野生型CDKN2A遺伝子を発現し、western blottingにより発現を確認する。野生型CDKN2A遺伝子を発現し、RBのリン酸化状態やE2Fによる転写活性などを指標とした機能評価系の構築を行う。並行して、CDKN2A遺伝子のギャップベクタ―およびバリアント導入プライマーによる増幅断片を出芽酵母に同時にトランスフェクションすることで、変異導入断片をプラスミドに導入する実験を行う。この2つの実験を同時に行うことで、研究の遅れを挽回する。
次年度使用額が生じた最大の理由は、実験の進捗が遅れたため、細胞培養を伴う実験に移行することができなかったことにある。細胞株を用いた実験のために、細胞株自体の購入の他に、血清や培地、トランスフェクション試薬などに予算を想定していたため、本年度は予想よりも使用額が少なかった。また、本研究に関しては、類似の内容で製薬会社の奨学寄附金に応募し、2件の助成金を得ていたため、本研究費を節約しながら研究を進めることが可能であった。
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Anticancer Research
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https://www.tohoku-mpu.ac.jp/medicine/lab/oncology/