研究課題
悪性中皮腫(malignant mesothelioma: MM)は化学療法等治療抵抗性の極めて予後不良(診断後生存中央値約1年)の腫瘍であり、世界中で今後さらに患者数が増えることが見込まれる。その変異は、塩基配列レベル変異は小児がんレベルと少なく、技術的に捉えにくい微小欠失が複数個所で起こり激しいゲノム再構成(chromothripsis-like patterns:CTLP)が生じている。CTLPが悪性化との関連性や、免疫チェックポイント阻害剤の有効性に寄与する可能性があるため、エクソン単位のゲノムコピー数(CN)変化を精度高く解析可能なMLPA(Multiplex ligation-dependent probe amplification)と次世代シークエンス解析を組合せた新規手法digital MLPA を開発した。同法を用いた腎細胞がんのCN解析では、患者予後悪化とCN変化数の増加には相関が見られ、1年内に転移が生じた予後不良患者由来の腫瘍でCDKN2A遺伝子に両アレル欠損が検出された。MMにおいて、CTLPとCDKN2A遺伝子の両アレル欠損は悪性化要因と予測し実験した。診断後5年以上生存した予後良好者は稀であるが、18名のFFPE検体を集め、LCMにより腫瘍を単離し解析した。結果、CN変化の多様性が大きく、染色体腕の1アレル増幅のみでCTLPを示さない穏やかなCN変化を示す検体が1例あったが、予想外に半数(9/18)はBAP1遺伝子周辺にCTLPが検出され、悪性化因子とされてきたCDKN2A遺伝子の両アレル欠損頻度は予後不良者より頻度は低いものの5/18であった。後者には免疫チェックポイント阻害剤が有効であったため予後が改善している患者も含まれていた。よってMM悪性化因子については、さらなる検討が必要であることが判明した。
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