研究課題/領域番号 |
21K07255
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長田 貴宏 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00456104)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前頭前野 / 反応抑制 / 機能的磁気共鳴画像法(fMRI) / 経頭蓋磁気刺激法(TMS) / 実行機能 / ネットワーク / 機能的領域分割 |
研究実績の概要 |
本研究は、自分自身の行動の抑制(反応抑制)を実現する神経回路メカニズムの解明を目的としている。機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)を用い、ヒト反応抑制に関わる脳領域を前頭葉や頭頂葉を中心に複数同定し、それらの領域間で形成されるネットワーク構造を推定した。さらに、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation; TMS)を用いて同定された脳領域に対しての介入実験を行い、反応抑制への影響を調べることにより、ネットワークの中での情報の流れを検証した。その結果、反応抑制の際、下前頭皮質の2つのサブ領域(下前頭皮質腹側部・背側部)を起点とした2つの情報処理回路が働くことが同定され(下前頭皮質腹側部から前補足運動野へ、下前頭皮質背側部から頭頂間溝領域へとそれぞれ情報が流れていく)、それぞれが異なる時間順序で独立して働き、別々の認知的機能を担っていることが示された。以上の成果を学術雑誌Cell Reportsに報告した(Osada et al., Cell Reports, 2021)。上記の反応抑制における大脳皮質での神経回路メカニズムの解明を進めるとともに、皮質下領域を含めた神経回路の検証についても進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
反応抑制を実現する神経回路メカニズムの解明に向けて、fMRIとTMSを有機的に組み合わせた実験を進めることにより、情報処理回路の解明を進めてきている。具体的には、TMSの単発刺激を課題遂行中に行い、fMRIにより同定された脳領域の活動を非侵襲的に一時的に不活性化する手法(Osada et al., Journal of Neuroscience, 2019)を活用し、課題遂行に影響が出るタイミングを調べることで領域間での情報の流れを同定することに成功した。また、連発TMSと単発TMSを組み合わせた手法を提唱し、下前頭皮質腹側部の活動を持続的に低下させ、その前後での下前頭皮質背側部や前補足運動野への単発TMSによる効果を調べることにより、回路間の関係性を見出すことに成功した。このようにfMRIとTMSそれぞれの利点をおおいに生かし、全脳における情報処理回路の解明を進めることができている。大脳皮質領域間での神経回路のみならず、次のステップとして皮質下領域を含めた回路の全貌を明らかにするために、新規介入手法を組み合わせたシステムによる実験を進めており、研究の幅をより広げてきている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きfMRIおよび非侵襲的介入手法を組み合わせた実験を行い、皮質領域間の神経回路、さらに皮質領域-皮質下領域での神経回路を同定し、反応抑制を実現させる脳内情報処理の検証をさらに進めていく。これらの成果をまとめ、学術雑誌への原著論文の投稿・発表を予定している。また、得られた成果は、研究室のウェブページやプレスリリースなどを用いて、積極的に社会に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会への参加がもっぱらオンラインで行われたため、旅費を計上していたが、執行されなかった。
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