研究課題/領域番号 |
21K07257
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
佐野 裕美 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (00363755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大脳基底核 / 線条体 / 随意運動 / 視床 |
研究実績の概要 |
線条体は大脳基底核と呼ばれる脳領域を構成する一つの神経核で、大脳皮質からの入力を受け、運動調節に重要な領域である。線条体には二種類のGABA作動性の投射ニューロンがある。一つは黒質網様部へ直接投射する線条体-黒質投射ニューロン(直接路)、もう一つは淡蒼球外節と視床下核を介して黒質網様部へ投射する線条体-淡蒼球投射ニューロン(間接路)である。直接路と間接路を介して黒質網様部へと送られた情報は、さらに視床へと送られる。最終的に、視床から大脳皮質へと情報が送られ、大脳皮質-大脳基底核-視床ループを形成している。直接路、間接路を介する情報伝達がどのような様式で視床へと伝わり、運動を制御しているのかを解明するため、今年度は間接路の線条体-淡蒼球投射ニューロンに光駆動性イオンチャネルであるチャネルロドプシン(channelrhodopsin-2, ChR2)を発現する遺伝子組換えマウスを利用して実験を行った。 マウスを脳定位固定装置に無痛的に覚醒下で保定するための保定具をマウスに取り付け、光刺激用の微小光ファイバーを線条体に刺入して線条体-淡蒼球投射ニューロンの興奮を誘導したとき、黒質網様部、視床において光刺激に対する応答を細胞外記録した。黒質網様部では、光刺激に応じて潜時が遅く、持続時間が長い「興奮」が認められた。一方、視床では、光刺激に応じて「抑制」が認められたものの、黒質網様部の応答と比較すると弱い応答であった。この視床での弱い抑制は間接路を介するものであり、運動制御に重要な応答であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では2021年度は、視床における線条体を介する神経伝達の解析を行う計画であった。線条体-淡蒼球外節投射ニューロンにChR2を発現する遺伝子組換えマウスを用いて、線条体への光照射により間接路を興奮させたときの応答を、黒質網様部と視床で記録しており、おおむね研究計画の通りに順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、線条体にChR2を発現する遺伝子組換えマウスに薬剤を注入してパーキンソン病モデルマウスを作出し、まずは、黒質網様部や視床での神経活動を記録する。次に、このマウスの線条体に光を照射し、線条体投射ニューロンを光刺激で興奮させたときの応答を黒質網様部や視床で記録する。さらに、線条体に光照射したとき、パーキンソン病モデルマウスに特徴的な運動異常が改善するのか増悪するのかを観察する。これらの実験から、線条体の投射ニューロンがどのように視床の神経活動を制御し、運動を調節しているのか、その運動制御の神経基盤の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加する予定であった学会がオンライン開催になったため、旅費が当初の予定より少ない使用額となってしまった。物品費として翌年に使用する計画である。
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