研究課題/領域番号 |
21K07262
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
渡邊 言也 高知工科大学, 総合研究所, 助教 (90637133)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストレス / レジリエンス / fMRI / EEG / コルチゾール |
研究実績の概要 |
本研究の目的はヒトにおけるレジリエンス(=ストレス環境に適応し回復する能力)の個人差を司る神経生理基盤を明らかにすることである。これにより、従来の医師やカウンセラーの経験に依存していたストレスからの回復状態の評価に神経生理学的根拠に基づく新たな評価軸を提供することを目的とする。 2021年度は約100名分の神経生理実験データを取得し、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とEEG(脳波)、および複数の生理指標(心拍・呼吸・瞳孔・コルチゾール・α アミラーゼ)の解析を行った。生理指標について①心拍数が個人のレジリエンスに負に相関すること。fMRI の結果については②島葉を中心とするネットワークがストレス経験後、レジリエンスの低いヒトたちで特に上昇すること、一方で③背側帯状皮質を中心とするネットワークはストレス経験後、レジリエンスの高いヒトたちで上昇するという、これまで報告されていない複数の特徴を発見した。 加えて、レジリエンスとパーソナリティ、そしてコロナ禍の緊急事態宣言期における変動性に関するアンケート調査を行ない、心理学的なレジリエンスの特徴を検証した。その結果レジリエンスの個人差は、コロナ禍のような慢性的なストレス環境でも、鬱傾向や慢性ストレス傾向などと比較して、変動性の少ない安定したパーソナリティであることが明らかとなった。 これらの結果の一部の内容については国内の2つの学会にて発表することができ、先生方から様々なご意見をいただくことができた。加えて、ストレスレジリエンスの神経生理学的基盤に関する総説論文を執筆し、出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた実験データの収集が完了できたとともに、総説論文を出版することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまでに収集したfMRI、EEG、複数の生理指標(心拍・呼吸・瞳孔・コルチゾール)それぞれの指標とレジリエンスパーソナリティの関係を明らかにするだけでなく、それらの要因の関係性も理解するための解析を行う。また本年度内に研究結果を英語論文にまとめ、出版報告することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に主たる実験を終えることができたが、今後はデータ解析にかかる経費(ハードディスク、メモリー、グラフィックボードなど)や、追加実験、学会・論文発表するための経費を計上させていただいた。
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