スキーマ依存の知識獲得には,上述のスキーマ調節に加え,スキーマに整合な情報をスキーマ自体には大きな変更を起こさずに獲得するスキーマ同化がある.スキーマ同化は起こりやすい現象であるがゆえに実験もしやすく,関与する脳部位は相当に確立されている.一方のスキーマ調節は,重要であるが頻繁に起こる現象ではないため,実験が難しく,その神経メカニズムはほとんど未解明だった.本研究の成果は,そのスキーマ調節の神経メカニズムの一端を初めて明らかにしたものであり,記憶・学習の神経科学において大きな意味を持つ.加えて,本研究が明らかにしたものは人の柔軟な知の基盤であり,それを促進する技術の開発にもつながりうる.
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