研究実績の概要 |
本研究では、安静時にヒト全脳で自発的・瞬時的に生じる信号伝達を明らかにする。 2023年度には、新しい脳磁図計測装置である光ポンピング磁力計のセンサ配置を決めるアルゴリズムを開発した(Takeda et al., 2023 NeuroImage)。開発アルゴリズムは、狙った脳部位の活動を精確に推定するためのセンサ配置を設計する。開発アルゴリズムを、単純なシミュレーションデータ、現実的なシミュレーションデータ、そして実データに適用することで、その特徴や有用性を明らかにした。開発アルゴリズムによって、光ポンピング磁力計を用いた簡便で高精度なヒト脳イメージングが可能になると期待される。 さらに、安静時にヒト全脳で瞬時的に生じる信号伝達を明らかにするため、大規模データベースCam-CAN (Cambridge Centre for Ageing Neuroscience) dataset inventoryから600名以上のT1強調画像、安静時脳磁図、行動データを入手・解析した。各被験者の脳磁図から、安静時脳活動に繰り返し現れる時空間パターンを推定した。時空間パターンは、約0.1秒の間に連続的に変化する全脳かつ複数周波数の脳活動を反映していた。時空間パターン内の信号伝達を明らかにするため、各脳部位・周波数におけるピーク時刻を検出し、ピーク時刻間の関係性を調査した。結果、時空間パターン内には、低周波から高周波へのピークの連鎖が高い頻度で生じていることが明らかになった。この結果は、低周波から高周波脳活動への信号伝達が、ヒト自発脳活動に繰り返し生じていることを示唆している。この周波数間の信号伝達は、全脳に分散された視覚・体性感覚等の情報が統合され意識が生まれる過程を反映しているのかもしれない。
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