研究課題
GPR3は恒常的Gs活性化型GPCRの一種で、神経細胞に発現が豊富なGPCRで脊椎動物で発現が保存されている。本研究ではGPR3が、神経障害後の軸索再生やシナプス形成・維持に与える影響について検討することを研究目的とした。令和3-4年度には、神経細胞におけるGPR3の機能について、PKA、PI3キナーゼ依存的な神経突起伸張メカニズムや、PI3K依存的な海馬神経細胞極性形成への関与を明らかにし、論文報告した。さらに、マウス網膜神経節細胞(RGC)におけるGPR3発現が、加齢や虚血ストレスに対し神経保護的に作用し、さらにRGCへのGPR3遺伝子導入が、視神経軸索障害後の軸索再生を促進することを解明し、既に研究成果を論文報告している。令和5年度には主に、神経細胞刺激におけるGPR3発現誘導メカニズムの解明とシナプス関連蛋白発現や機能に与える影響について検討した。その結果、GPR3がPC12細胞分化に関連した神経成長因子(NGF)刺激やcAMPアクチベーターのForskolinによる刺激後に、CREB, AP-1(c-fos; c-jun)転写因子を介して、急速に発現上昇することを新たに見いだした。さらに、GPR3はcAMP-CREB経路介して、 核内受容体NR4A1-3発現を正に調節し、NR4A1を介してSynapsin1発現に影響を与えた。以上の結果から、各種神経細胞刺激に対しGPR3転写活性が早急に増加し、GPR3は神経細胞において初期応答遺伝子群(IEGs) の一つと考えられた。神経細胞において、GPR3は神経活動・細胞刺激・ストレスに反応して急速に発現上昇し、神経細胞分化やシナプス機能を調節する可能性が示唆される。また、GPR3はNR4A1以外にも、他のCREB転写因子に関連した遺伝子発現に影響を与える可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件)
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