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2022 年度 実施状況報告書

鼻腔炎症が惹起する髄膜免疫系の活性化と末梢免疫細胞の脳内浸潤を介する脳の免疫応答

研究課題

研究課題/領域番号 21K07280
研究機関杏林大学

研究代表者

石井 さなえ  杏林大学, 保健学部, 准教授 (40435863)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード鼻腔炎症 / スペクトルフローサイトメトリー / 髄膜免疫系 / 嗅球
研究実績の概要

慢性的な鼻腔炎症はうつ病など精神疾患の原因になりうる。その最初期の分子・細胞機構を明らかにするため、鼻腔炎症の急性期に鼻腔、嗅球、髄膜で起こる変化を組織学的、遺伝子発現的に調べた。その結果、鼻腔炎症を起こした12-48時間の間に、末梢炎症細胞が嗅球に浸潤することを見出した。今年度は、①これまでのデータをまとめて発表する、②末梢炎症細胞が髄膜にも浸潤するのかをフローサイトメトリーで確認する、③末梢炎症細胞が嗅球に浸潤する際の分子機構を明らかにする、を目標に研究を行った。①については、論文にまとめ、発表した。②については、共同研究者のミシガン州立大学のローメント博士を訪ね、鼻腔炎症を起こした24時間後の嗅球と髄膜を採取し、16種類の蛍光細胞マーカーを用いたスペクトルフローサイトメトリーを行った。その結果、嗅球における末梢免疫細胞の比率は非常に高くなったが、髄膜における末梢免疫細胞の比率はほとんど変化しなかった。髄膜のサイトカイン発現は大きく変動したことから、活性化した末梢炎症細胞が髄膜空間に浸潤したのではなく、常在している細胞が活性化してサイトカインを発現するようになったのだろうと考えた。③については、ケモカインアンタゴニストやケモカイン中和抗体をもちいて、予想していた浸潤シグナルを阻害する実験を試みた。免疫染色では浸潤末梢免疫細胞が減少したように見えたが、フローサイトメトリーでは末梢炎症細胞の減少は見られず、結果が一致しなかった。様々な工夫を凝らしながら何度も試みたが、免疫染色とフローサイトメトリーの結果のズレが解消できなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

鼻腔炎症急性期に末梢炎症細胞が嗅球に浸潤する時間経過とサイトカインの発現変動について、論文にまとめて発表した。また、学会発表を行った。
チャレンジングな課題については結果が得られないものもあった。そして新たな研究課題も見つかった。
以上を総合して、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

アンタゴニストや中和抗体を用いた末梢炎症細胞の嗅球への浸潤阻害は、免疫染色で見ると阻害されているように見えたが、フローサイトメトリーでは全く阻害されないという結果になった。免疫染色とフローサイトメトリーの結果の食い違いが解決できないことから、別の方法を検討することにする。
また、鼻腔炎症に伴う髄膜免疫系の活性化は、鼻腔炎症により嗅球に神経炎症が起こった結果、老廃物や免疫細胞の排出が活発に行われるようになった可能性が考えられる。今後はその可能性についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

前年度繰越金が予想以上にあったため、次年度使用額が生じた。次年度に消耗品費として使用する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件)

  • [国際共同研究] ミシガン州立大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ミシガン州立大学
  • [国際共同研究] MDアンダーソンがんセンター(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      MDアンダーソンがんセンター
  • [国際共同研究] ペンシルベニア州立大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ペンシルベニア州立大学
  • [雑誌論文] Prolonged and extended impacts of SARS-CoV-2 on the olfactory neurocircuit.2022

    • 著者名/発表者名
      Kishimoto-Urata M, Urata S, Kagoya R, Imamura F, Nagayama S, Reyna RA, Maruyama J, Yamasoba T, Kondo K*, Hasegawa-Ishii S*, Paessler S.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 12(1) ページ: 5728

    • DOI

      10.1038/s41598-022-09731-7

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Infiltration of peripheral immune cells into the olfactory bulb in a mouse model of acute nasal inflammation.2022

    • 著者名/発表者名
      Asano H, Hasegawa-Ishii S*, Arae K, Obara A, Laumet G, Dantzer R and Shimada A.
    • 雑誌名

      J Neuroimmunol.

      巻: 368 ページ: 577897

    • DOI

      10.1016/j.jneuroim.2022.577897.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Delayed microglial activation associated with the resolution of neuroinflammation in a mouse model of sublethal endotoxemia-induced systemic inflammation.2022

    • 著者名/発表者名
      Shimada A, Murata M, Aoyagi S, Asano H, Obara A and Hasegawa-Ishii S.
    • 雑誌名

      Toxicol Rep.

      巻: 9 ページ: 1380

    • DOI

      10.1016/j.toxrep.2022.06.015.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modification of the immune response by bacteriophages alters methicillin-resistant Staphylococcus aureus infection.2022

    • 著者名/発表者名
      Suda T , Hanawa T, Tanaka M , Tanji Y , Miyanaga K, Hasegawa Ishii S , Shirato K, Kizaki T and Matsuda T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 12(1) ページ: 15656

    • DOI

      10.1038/s41598-022-19922-x.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Perturbation of gut microbiota and brain tissue damages caused by neonatal nasal inflammation2022

    • 著者名/発表者名
      Sanae Hasegawa-Ishii, Hinami Asano, Yuko Mishima, and Takako Osaki
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会
  • [学会発表] Infiltration of peripheral immune cells into the olfactory bulb in a mouse model of acute nasal inflammation2022

    • 著者名/発表者名
      Hinami Asano, Atsuyoshi Shimada, Sanae Hasegawa-Ishii
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会
  • [学会発表] SARS-CoV-2感染症による嗅覚系への影響2022

    • 著者名/発表者名
      浦田真次、岸本めぐみ、籠谷領二、石井さなえ、今村文昭、永山晋、近藤健二、Paessler Slobodan、山岨達也
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会
  • [学会発表] 鼻腔炎症に起因する髄膜免疫系の時空間的変動2022

    • 著者名/発表者名
      石井さなえ、浅野妃南、新江賢
    • 学会等名
      第51回杏林医学会総会
  • [学会発表] 鼻炎の急性期に生じる末梢免疫細胞の脳への浸潤2022

    • 著者名/発表者名
      浅野妃南、島田厚良、石井さなえ
    • 学会等名
      第51回杏林医学会総会
  • [学会発表] 新生仔の鼻腔炎症が腸内細菌叢に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      浅野妃南、三島由祐子、大崎敬子、石井さなえ
    • 学会等名
      第56回無菌生物ノートバイオロジー学会

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公開日: 2023-12-25  

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