研究課題/領域番号 |
21K07284
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
名和 幹朗 東京医科大学, 医学部, 講師 (10398620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭型認知症 / TDP-43 / 神経細胞死 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
ALSとFTDは神経細胞が進行性に変性・脱落が見られる。両疾患では編成部位が異なっており、ALSでは運動神経細胞死によって運動機能障害を呈し、FTDでは前頭葉や側頭葉の萎縮による認知機能障害、人格変化、行動異常を呈するため異なる疾患概念とされてきた。近年、両疾患で見られるユビキチン陽性封入体に共通する構成成分としてTDP-43タンパク質が同定され、両疾患は共通の病態基盤を有することが明らかになってきた。また、ALSでは本来核に存在するTDP-43がリン酸化を受けた状態で細胞質内で凝集しており、疾患のマーカーとして用いられている。しかし、TDP-43のリン酸化機構の全貌や、リン酸化がTDP-43の生理機能に与える影響に関しては不明な点が多い。これまでに報告されているTDP-43リン酸化部位の多くはTDP-43タンパク質のC末に存在しているが、我々はこれら既知の部位とは異なるリン酸化部位を同定し、さらに、同定した新規リン酸化部位がTDP-43による細胞死誘導に必須であることを確認している。 家族性ALSで同定されたTDP-43の変異体(A315T変異)をマウスに発現させるとALS様症状が起こるが、本研究ではA315T変異に加え、新規リン酸化部位のアミノ酸をアラニンに置換した変異体を発現するトランスジェニックマウスの作製を行なった。また、2021年度にキナーゼ阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングの結果、複数のキナーゼ阻害剤がTDP-43誘導性の細胞死を抑制可能であることを見出したが、ライブラリー中のキナーゼ阻害剤は特異性が低いのものも含まれる。そこで、本年度は、ライブラリー中のキナーゼ阻害剤のターゲットキナーゼに対する特異的な阻害剤を用いてTDP-43誘導性の細胞死を抑制するか検討した結果、複数のキナーゼの阻害剤によりTDP-43誘導性細胞死が抑制されることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ化の影響により試薬や器具の製造・納品遅延により、2021年度に行う予定であったTDP-43トランスジェニックマウスの作製が遅延した。これにより、研究の進捗状況はやや遅れているが、2021年度末からトランスジェニックマウスの作製が可能となり、2022年度は作製したマウスの表現型解析の一部が出来るまでに進捗状況の遅延を取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規に同定したTDP-43リン酸化部位のリン酸化制御機構の解析と、同リン酸化部位がリン酸化を受けることによりどのようにして細胞死が誘導されるかについて解析を行う。また、作製したトランスジェニックマウスの表現型の解析を行い、新規リン酸化部位のALS病態発症や症状進行に与える影響を検討する予定である。また、2022年度に同定したTDP-43誘導性細胞死に関与するキナーゼが、TDP-43誘導性の細胞死経路をどのように制御するかについて検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に本研究で予定していたトランスジェニックマウスの作製が、コロナ禍による機器・試薬不足により遅延したためマウスの飼育費用及び、表現型の解析費用が2021年度から367,533円繰越した。2022年度はトランスジェニックマウスの作製が進み、予定していた予算である1,100,000円をやや上回る1,143,236円を支出した。2023年度は2022年度からの繰越し分と請求した助成金を合わせて、作製したトランスジェニックマウスの表現型解析等に使用する予定である。
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