研究課題/領域番号 |
21K07286
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研究機関 | びわこリハビリテーション専門職大学 |
研究代表者 |
井出 千束 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 教授 (70010080)
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研究分担者 |
中野 法彦 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 教授 (40322721)
兼清 健志 びわこリハビリテーション専門職大学, リハビリテーション学部, 准教授 (20525399)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脊髄 / 上衣細胞 / 脊髄損傷 / 再生 / 細胞移植 / 臨床応用 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで脊髄損傷の効果的な治療法を目指して、脊髄損傷ラットをモデルに、骨髄間質細胞、脈絡叢上衣細胞などの細胞移植実験、あるいは細胞培養液の髄液内注入法などによって、細胞移植そのものあるいは細胞から分泌される有効因子の効果によって脊髄再生が促進されることを見てきた。その中で、4-5年前から脊髄の中心管上衣細胞の特異な役割に注目してきた。脊髄が損傷を受けると、中心管上皮細胞が脱分化し、幹細胞となって脊髄の組織再生に重要な役割を果たしていることが分かってきた。この現象は、脊髄損傷に際して、同個体の上衣細胞が脊髄再生に貢献していることを示す所見で、重要な意味を持つ。本研究は、自己細胞による脊髄再生という画期的な現象を解明し、臨床応用に資することを目的としている。 実験では、ラットの脊髄T8-9レベルに損傷を加え、その後2日、7日、14日の時点で動物を固定して、損傷部近傍の中心管上衣細胞の増殖、遊走、移動、分化などを電子顕微鏡と免疫組織化学で調べた。これまでに次のような所見が明らかになっている。損傷に対する反応として、上衣細胞が細胞の極性を無くし、増殖してくる。中心管の上衣細胞は本来単層あるいは2層であるが、増殖するために層構造が不明瞭になり、同時に周辺に遊出してくる。この現象は印象的で、電子顕微鏡で明らかに把握することができた。損傷14日では、遊走したと思われる細胞が多数の突起を出して周囲の細胞とつながっている所見が見られる。免疫組織化学で、一部の遊走細胞はオリゴデンドロサイトのマーカーであるNG2あるいはPDGFR陽性であった。本年は中心管の終末部を構成する終糸上衣細胞を移植片として移植実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脊髄損傷による脊髄上衣細胞の変化については、「研究実績の概要」に述べたごとく、この研究の概略を見通せるデータは出たと考える。研究が順調に進んでいると見ることもできるが、当事者としては得られた成果を基に、多くの学会発表と論文の投稿を予定していた。しかし結果的には期待した程の多くの学会発表をすることができなかった。従来は、大学運営の忙しい環境にありながら十分な研究成果を出すために体制を整え、効率的は研究を進めてきた。2021年度もそのように研究体制を組んだが、結果的には予定した研究計画を進めることが環境的に難しかったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの進捗状況」に述べたように、一面で研究時間の問題があったので、2022年度は、この点を反省して、できるだけ多くの時間を研究に割けるように体制を組んだ。本学は大学創立3年となり、業務に余裕が出て研究への時間が生まれつつある。研究グループの効果的な共同作業を組んで、実験の密度を高めたい。本年度の研究の主題は細胞移植である。移植細胞が宿主の脊髄組織内で増殖・分化するかを含めてどのような運命をたどるか、が焦点である。比較的単純な主題であるので協同作業を高めることによって成果が得られると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大によって、研究の実施計画の変更を余儀なくされた。それに加えて、これまでのデータの検討が必要になり、そのために時間が取られ、実験の実施に影響した。 使用計画 データの検討は済んだので、これまでの研究計画をさらに進めるべく、多くの実験を組み込んで、助成金を使用する。
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