研究実績の概要 |
これまでの結果から、ピロリ菌(HP)が産生する外膜小胞(OMV)が血行性に全身を巡ること、また老齢のマウスでは血液脳関門が弱くなっておりHP-OMVが脳へと移行しうることが分かった。脳へ入ったHP-OMVはミクログリア活性化を主体とした炎症を起こしていることを示唆するデータも得ている。そこで、HP-OMVのうちでどういった成分が炎症に働くかを明らかにするため、HP-OMVのタンパク質をLC-MSによって解析した。その結果、病原性因子とされているneutrophil-activating protein, TNF-a-inducing protein, ureaseなどが検出された。 ミクログリアでのin vitroの実験では、HP-OMVを熱や界面活性剤で破壊したものを暴露するとインタクトなものに比べて5~10倍NFkBシグナルの活性化が強く起こること、IL-6やIL-1bなどのサイトカインのmRNAレベルが100倍以上に増加することなどが分かり、HP-OMVに内包される成分が炎症を強く引き起こすことが分かった。 また、HP除菌による影響を検討するためHP感染3ヶ月後の野生型(WT)とADマウスに抗菌薬2種とプロトンポンプ阻害薬を7日間投与し除菌した。その後さらに3ヶ月間飼育した後、マウスから血液、胃、脳を回収した。胃の免疫染色で除菌が100%成功していることが確認できた。脳の炎症をミクログリア活性化を指標に免疫染色で調べた。その結果、除菌の有無で差がないことが分かった。これまでの感染実験の結果から、感染後3ヶ月がミクログリア活性化はピークとなり、10ヶ月ではむしろ弱くなっていくことが分かっているため、非除菌群では感染期間が6ヶ月と長期になるためこの方法では除菌の影響を検討することに問題があることが考えられた。
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