研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、脳幹と脊髄の運動神経細胞の機能障害と細胞死、それによって引き起こされる運動障害を特徴とする神経変性疾患である。TDP-43は家族性および弧発性ALSの原因タンパク質である。ALSの運動神経細胞では、ユビキチン化したTDP-43が細胞質に凝集体を形成し、この凝集体が神経細胞の機能不全と細胞死を誘導し、ALSを発症する。ストレス顆粒はストレス下で一過性に形成される非膜オルガネラである。最近、ユビキチン化TDP-43の凝集体形成にストレス顆粒が関与することがわかってきた。本研究の目的は、ストレス顆粒形成の品質管理機構を明らかにし、ALSにおけるTDP-43凝集体形成のメカニズムを明らかにすることである。昨年度は、下記の3つの研究成果をあげることができた。1)ALSにおいてTDP-43蛋白質の分解を誘導し、異常なTDP-43凝集体の形成を抑制する分子メカニズムを解明できた(Kakihana, iScience, 2021)、2)ALSの原因遺伝子であるTDP-43に結合し、病的なTDP-43凝集体の形成を抑制する分子を発見できた(Takahashi, Mol Cell Biol, 2022)、3)ドーパミン神経細胞の細胞死を抑制する新たな分子を発見できた(Sango, J Biol Chem, 2022)。
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