研究課題/領域番号 |
21K07296
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
城谷 圭朗 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (20322696)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 炎症 / ミクログリア / TREM2 / 危険因子 |
研究実績の概要 |
課題① Trem2 R47Hノックインマウスでのアルツハイマー病の病理と発症の促進 作製した野生型とR47H変異型Trem2のホモノックインマウスをアルツハイマー病モデルマウスAppNL-Fと交配し、それぞれ雌雄ともに30匹程度繁殖した。予備検討として12~24ヶ月齢のAppNL-Fマウスの大脳皮質や海馬にアミロイド斑が出現していることを確認したが、12ヵ月齢ではアミロイド斑がわずかであった。当初15ヵ月齢以下のマウスで解析しようと考えていたが、研究を完遂させるために12、18、24ヵ月齢での解析に切り替えた。 課題② Trem2 R47Hノックインマウスの初代培養ミクログリアの機能変化 Trem2の貪食能を解析する実験系を作製した。具体的には、細胞内に取り込まれると蛍光を発するpHrodoで標識した大腸菌もしくは死細胞をミクログリアとインキュベーション後、プレートリーダーで蛍光を測定した。ところが得られる初代培養ミクログリアの数が少なく貪食アッセイには不向きであったため、同じく自然免疫細胞でミクログリアと性質が似ている初代培養骨髄由来マクロファージを用いた。その結果これまでの論文とは異なり野生型とTrem2ノックアウトマクロファージ間では貪食能に差はなかった。そこでLPSでマクロファージを活性化させた状態で貪食能を比較したところ、野生型の方がより貪食能が増加した。これよりTrem2はLPSによるマクロファージの貪食能活性化に機能していると考えられた。次に野生型Trem2とR47H変異型Trem2ノックインマウスのマクロファージで貪食能を比較したところ、LPSの有無にかかわらず貪食能に有意な差はなかった。 課題③ 発症への時間軸に沿ったミクログリアの遺伝子発現プロファイルの変化 マウスを加齢させ年齢に達した時点で脳を採取している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型とR47H変異型Trem2のノックインマウスとアルツハイマー病モデルマウスであるAppNL-Fマウスとの繁殖が完了し、加齢させて脳摘出する段階に入っているため。またTrem2 R47H変異により初代培養マクロファージの貪食能が障害されるわけではないことを明らかにし個体レベルでの解析がアルツハイマー病発症促進メカニズムの解明に必要であることを示したため。
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今後の研究の推進方策 |
野生型およびR47H変異型Trem2ノックインマウスを加齢させ解析可能な年齢に達したマウスからアルツハイマー病の病理(アミロイドβの蓄積やタウのリン酸化、神経炎症マーカーの発現、ミクログリアのアミロイド斑への集積やバリアー機能)や認知機能低下(モーリス水迷路試験による空間認知力と記憶力)が促進されるかを調べる。また遺伝子発現変化や脳内のTrem2リガンド同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを加齢させる時間を延ばしたためマウス飼育費はかかっているが、脳内のアミロイド斑やミクログリアの活性化の解析はマウスが適齢期に達し次第行うため予算の執行を次年度に延期したため。また新型コロナの影響で学会の現地参加が予想より少なかったため。次年度はマウスが適齢期に達し次第、計画したマウス脳の解析を精力的に行う。具体的には、組織化学および生化学実験に必要な抗体、ELISAキット、qPCR試薬などの購入や、学会参加費に充てる予定である。
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