研究課題
申請者らは研究対象としてきた常染色体優性脊髄小脳失調症(SCA)大家系において、新型DNAシーケンサーを用いて低電位活性化型のT型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)の一種であるCaV3.1をコードするCACNA1Gのミスセンスバリアント、p.Arg1715His(R1715H) を同定した。単一アミノ酸のミスセンスバリアントであるR1715Hにより実際に神経変性が惹起されるかは不明であり、申請者らはその証明には動物モデルの作成が必須であると考え、R1715Hと同等のR1723HバリアントをCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により導入したノックインマウス(Cacna1g_R1723H_KIマウス)を作成した。これまでに申請者らは構造モデリング、ヒト病理検体解析、培養細胞実験を継続するとともにCacna1g_R1723H_KIマウスの多面的解析を行い、このバリアントによるタンパク質凝集性には変化がないこと、行動解析において患者と同様の緩徐進行性の失調症状を示すこと、プルキンエ細胞(PC)の進行性変性を呈すること、PCおよび下オリーブ核神経細胞がカルシウム電流異常を含む電気生理学的異常を呈することを示し、SCA42の表現型を良好に再現するモデルを確立してきた。本研究ではCacna1g_R1723H_KIマウスにT型VGCC修飾薬の投与を行い、その効果を表現型解析、病理学的解析、RNA発現解析など多面的に検証することにより、新たな疾患修飾治療法を開発し疾患克服への道筋をつけること、また光遺伝学的手法を用いて神経変性の病態基盤をin vivoのレベルで解明することを目的としている。これまでに発症前からの投与により表現型解析、病理学的解析においてT型VGCC修飾薬の効果を認めており、昨年度は発症早期投与の効果を検証した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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