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2022 年度 実施状況報告書

家族性パーキンソン病PARK17由来iPS細胞を用いた根幹病態の解明と治療薬開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K07302
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

岡野 ジェイムス洋尚  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードパーキンソン病 / VPS35 / レトロマー / 新規オートファジー / Rab9
研究実績の概要

家族性パーキンソン病PARK17はレトロマーの構成因子VPS35のD620N変異によって発症する。レトロマーの生理機能から考察して、細胞にとって最も基本的な恒常性維持機構である細胞内輸送の障害が、二次的にリソゾーム、ミトコンドリア、オートファジーの機能不全を引き起こしうるのではないかという仮説をたてパーキンソン病の根幹病態の解析を行なった。野生型VPS35と比較して変異型VPS35が、細胞が飢餓状態時にRab9を含む小胞との相互作用が優位に低下することを明らかにするとともに、変異型VPS35存在下ではRab9とリソソームの共局在が減少し、ATG5の発現を抑制するとRab9のリソソームへの取り込みが変異型VPS35群で顕著に減少することを示した。VPS35が何らかのメカニズムでRab9を介した新規オートファジー制御に関与している可能性が強く示唆された。そこで2022年度は、PARK17の患者iPS細胞から分化誘導したニューロンにおいてATG5をノックダウンしconventionalオートファジーを特異的に抑制したところ疾患群特異的にオートファジーが低下し、エストロゲンを添加すると回復することがわかった。疾患群においてRab9とATG5の両方をノックダウンすると、エストロゲン添加によるオートファジーの回復が阻害されることがわかった。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが強く示唆された。今後、エストロゲンによるオートファジー活性化が、疾患群のドパミンニューロンにおけるアルファシヌクレインの蓄積を減少させ,神経細胞死を抑制できるか検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2021年度に新規オートファジー評価法を確立したことによりiPS細胞由来ニューロンを用いた病態研究が可能になった。2022年度は、これまでHeLa細胞を用いて示してきた変異型VPS35の細胞内小胞輸送およびオートファジーへの影響について、ヒトiPS細胞から誘導したニューロンを用いて検証した。PARK17患者由来iPS細胞および健常コントロールiPS細胞からニューロンを分化誘導し、Cyto-ID添加によりオートファジーを検出して調べたところ、疾患群・健常コントロール群間で差がなかった。そこでsiRNAによりATG5をノックダウンしconventionalオートファジーを特異的に抑制すると疾患群で有意にオートファジーが低下し、エストロゲンを添加すると回復することがわかった。しかし、エストロゲンは健常コントロール群のオートファジーには影響しなかった。これらの結果から、変異型VPS35は新規オートファジーを抑制することが強く示唆された。さらに、疾患群においてRab9とATG5の両方をノックダウンすると、エストロゲン添加によるオートファジーの回復が阻害されることがわかった。また健常コントロール群においても、Rab9とATG5の両方をノックダウンすると疾患群と同様にエストロゲン不応性にオートファジーが抑制されることが示された。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが強く示唆された。

今後の研究の推進方策

患者・健常者由来iPS細胞からドパミンニューロンを分化誘導し、エストロゲンによるオートファジー活性化が、疾患群におけるアルファシヌクレインの蓄積を減少させ,神経細胞死を抑制できるか検討する。これまでの研究でPARK17患者iPS細胞由来TH陽性ドパミンニューロンにおいてエンドソームの輸送障害、アルファシヌクレインの細胞内蓄積、神経細胞死が起こることが明らかになっている(Bono K. et al. 2020)。そこで、簡便な小分子による分化誘導法にかえ,より効率的にドパミンニューロンを誘導できるAscl1, Nurr1, Lmx1bの3遺伝子導入法を利用しPDモデル細胞を作出して解析する。また、オートファジー・リソソーム系の障害によりミトコンドリア品質異常が惹起される可能性があるため、患者ドパミンニューロンにおけるミトコンドリア膜電位を計測しミトコンドリア機能障害を検証する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、コロナ禍により研究室の稼働が制限されたこともあり、iPS細胞を用いた実験が滞ったためである。2023年度の研究計画では、引き続きヒトiPS細胞を培養し分化誘導を行って解析するために細胞培養試薬を多数使用する必要がある。そのため、次年度使用額と2022年度請求額を合わせた金額を主に物品費に計上し、これらの試薬を購入する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] iPS細胞技術を利用した難治性神経疾患の病態・創薬研究2022

    • 著者名/発表者名
      岡野ジェイムス洋尚
    • 学会等名
      第1回包括的がん緩和病態生理医療薬学研究会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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