研究課題
我々はレトロマーの構成因子VPS35のD620N変異によって発症する家族性パーキンソン病PARK17患者由来 iPS細胞由来ドパミンニューロンにおける細胞の脆弱性やαシヌクレインの蓄積を報告したが、ゲノムワイド関連解析などの遺伝学的解析でパーキンソン病と密接な関係が示されているオートファジー障害については詳細な病態が解明されていなかった。本研究によりD620N変異細胞では健常群と比較して細胞が飢餓状態時にRab9を含む小胞との相互作用が優位に低下し、リソソームとの共局在が減少することがわかった。また、PARK17の患者iPS細胞から分化誘導したニューロンにおいてATG5をノックダウンしconventionalオートファジーを特異的に抑制したところ、疾患群特異的にオートファジーが低下し、エストロゲンを添加すると回復することがわかった。さらに疾患群においてRab9とATG5の両方をノックダウンすると、エストロゲン添加によるオートファジーの回復が阻害されることがわかった。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが示された。さらに、エストロゲンの投与が細胞脆弱性およびαシヌクレイン蓄積を改善することが示された。これらのエストロゲンの作用は、古典的オートファジーに関与するATG5の発現抑制には影響されない一方、Rab9やWipi3といった新規オートファジーに必須のタンパク質の発現抑制により改善効果が失われることがわかった。エストロゲンにはパーキンソン病の発症・進行抑止作用があることが複数の臨床研究で明らかにされているが、その機序はこれまで解明されていなかった。本研究の成果は、パーキンソン病におけるエストロゲンの疾患修飾作用における新規オートファジーの関与を証明するものである。
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