研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(MM)は新規治療の導入により予後は改善してきているが、未だ治癒は望めず、治療成績の向上が社会的に求められている。申請者らは血液腫瘍における分子生物学的異常を検討してきた中で、スプライソソーム分子SF3A1の一塩基多型が骨髄異形成症候群の病勢に関与することを発見し報告した(Kitakanto Medical Journal. 2020; 70:315-323)。スプライソソームは転写されたRNA前駆体からイントロンを取り除いて成熟mRNAにする機能を持つ。がん細胞では、スプライソソームの遺伝子変異や発現の脱制御により異常スプライシングが生じ、その進展や治療効果の低下につながるとされる。そこで、多発性骨髄腫の悪性化メカニズムの解明を目的として、MM細胞における野生型スプライソソームの発現制御機構を明らかにするために、骨髄腫細胞株(KMM1, KMS11, KMS12BM, KMS12PE, KMS18, KMS26, RPMI8226, MM.1S)におけるスプライソソーム関連遺伝子(SF3A1, SF3B1, SF1, SRSF1, SRSF2, U2AF1, U2AF2, PTBP1, ZRSR2, HNRNPA1, HNRNPA2B1)及びMYCの発現をReal Time PCRで検討した。その結果、白血病細胞株HL60に比較して、MM細胞株においてはHNRNPA2B1が高発現しており、SF3B1、SRSF2が比較的高発現していることが明らかとなった。また、HNRNPA2B1やSRSF2の転写を制御していると言わるMYCが高発現していた。 以上の結果より、MMの病態にスプライソソームの異常が大きく関与している可能性が示唆された。
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