研究課題/領域番号 |
21K07311
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研究機関 | 群馬医療福祉大学 |
研究代表者 |
村上 博和 群馬医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (40166260)
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研究分担者 |
笠松 哲光 群馬大学, 大学院保健学研究科, 助教 (60737542)
増田 裕太 群馬医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (40908985)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / スプライソソーム / HNRNPA2B1 / SRSF2 / MYC / ELOVL1 / p21 |
研究実績の概要 |
【目的】スプライソソームはRNAが成熟する際に生じるスプライシングに関与するタンパク-RNA複合体であり、様々な分子が同定されている。スプライソソームの異常はがんなどの様々な疾患に関与することが知られており、治療標的としても注目されている。我々は、スプライソソーム遺伝子の発現ならびに関連遺伝子の発現を多発性骨髄腫(MM)細胞株を用いて解析した。またsiRNAを用いてスプライソソーム遺伝子をノックダウンした際のMM細胞株における遺伝子発現、細胞増殖の変化等について検討した。 【方法】MM細胞株におけるスプライソソーム遺伝子の発現解析にはRT-qPCR法を用いた。発現量は内在性コントロールのACTBを用いてΔCt法にて解析しsiRNAによる検討では、Lipofectamineを用いてsiRNAをMM細胞株に導入し、遺伝子発現解析、細胞増殖試験などの解析を行った。 【結果】MM細胞株において、スプライソソーム遺伝子であるHNRNPA2B1、SRSF2 が高発現していた。HNRNPA2B1のノックダウンによってMYCの発現の減少を認め、一部のMM細胞株では細胞増殖が抑制された。さらに、細胞株KMS12PEならびにKMS18において、HNRNPA2B1をノックダウンし、NGSにて解析したところ、DNMT3N, CCND, CDKN1の発現が増加し、ELOVL1, HNRPNUL1の発現が低下した。 【結論】MM細胞株において高発現しているスプライソソーム遺伝子が同定され、それら遺伝子の発現ががん遺伝子であるMYC、DNAメチル化関連遺伝子、p21、脂質代謝関連遺伝子ELOVL1の発現と関連していることが示唆された。さらにHNRNPA2B1の発現増加がMM細胞の増殖亢進と関連している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.第一の目的である「MM細胞株におけるスプライソソーム関連分子発現状態の解析と発現制御メカニズム解明 ・ スプライソソーム関連分子mRNA・蛋白の発現解析」:9種のMM細胞株において、HNRNPA2B1、SRSF2が高発現していることが判明した。第二の目的である「MM細胞におけるスプライソソーム関連分子の機能解析 ・ スプライソソーム関連分子発現調整株の樹立と細胞増殖との関連の検討」:HNRNPA2B1、SRSF2発現ががん遺伝子MYC発現と強い相関を持つことが判明した。また、HNRNPA2B1のノックダウン株(細胞株KMS12PEならびにKMS18)を作成することができた。そのノックダウン株の遺伝子発現をNGSにて網羅的に解析し、DNMT3N, CCND, CDKN1の発現が増加し、ELOVL1, HNRPNUL1の発現が低下していることを見出した。しかし、高発現株の樹立には至っていないため、スプライソソーム遺伝子の細胞増殖との関連が検討できていない。 2.研究代表者が病気にて長期休職したため、研究の進行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
1年の研究期間延長の承認を得ている。 第一の目的である「MM細胞株におけるスプライソソーム関連分子発現状態の解析と発現制御メカニズム解明 ・ スプライソソーム関連分子mRNA・蛋白の発現解析」が終了し、第二の目的である「MM細胞におけるスプライソソーム関連分子の機能解析 ・ スプライソソーム関連分子発現調整株の樹立と細胞増殖との関連の検討」の中でMM細胞株において高発現していた遺伝子HNRNPA2B1のノックダウン株の解析が終了している。今後、HNRNPA2B1高発現株の樹立をめざす。その高発現株において、NGSを用いて誘導される遺伝子の変化を解析し、HNRNPA2B1の多発性骨髄腫における病態、増殖等との関連を検討する。さらに、第三の目的である「スプライソソーム関連分子と抗MM腫瘍薬作用との関係の解明」を目指す。そのため、 ① 「スプライソソーム阻害薬単剤およびMYC阻害薬との併用によるMM細胞障害性の評価 」、および②「新規抗骨髄腫薬へのスプライソソーム関連分子の影響とスプライソソーム阻害薬との併用効果の評価 」を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.研究代表者が疾病のため長期入院し、実験が遂行できない期間が約3カ月あった。 2.NRNPA2B1、SRSF2の高発現MM細胞株の樹立に困難をきたし、再検討に時間を要している。現在、基礎実験中であり、2024年度には高発現株の樹立が期待される。その高発現株において、NGSを用いて誘導される遺伝子の変化を解析し、HNRNPA2B1の多発性骨髄腫における病態、増殖等との関連を検討する。さらに、第三の目的である「スプライソソーム関連分子と抗MM腫瘍薬作用との関係の解明」を目指す。そのため、高発現株作成のための試薬(培地等)、リアルタイムPCR用試薬、抗骨髄腫薬(サリドマイド、レナリドミド、ボルテゾミブ、メルファラン)代、消耗品(ピペット、チップ、試験管等)を次年度に使用する。
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