研究課題/領域番号 |
21K07313
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴崎 孝二 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医(出向) (20625735)
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研究分担者 |
小川 純人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (20323579)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老年症候群 / リハビリテーション / 嚥下障害 / 排泄障害 / 日常生活動作 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はリハビリテーション阻害因子となる老年症候群を網羅的に解析し、脳血管障害や骨折によりADL低下を来たした高齢者に対し、効果的なリハビリテーション介入方法を確立することである。 脆弱性骨折後の嚥下障害発生状況調査と、言語聴覚士介入の有用性についての検討では、2021年日本リハビリテーション医学会にて学会発表を行った。嚥下障害が強いほど死亡率が高値であることが分かった (Hazard Ratio, リスク分類1: 1.6, p =0.03, リスク分類2: 4.1, p <0.01, リスク分類3: 8.9, p<0.01)。また、言語聴覚士の介入により嚥下障害改善群は、不変/悪化群と比べ追跡期間中の肺炎死亡、嚥下障害関連疾患死亡が有意に低いと言う結果を得た。 脆弱性骨折後のポリファーマシーがリハビリテーションに及ぼす影響についての検討では、脆弱性骨折後の骨粗鬆症薬投与がリハビリテーションによるActivities of daily living (ADL)の改善と関連し、骨粗鬆症薬投与群のほうが非投与群に比べ有意にADLが改善していることを明らかにした。 脳血管障害、骨折患者の排泄障害とリハビリテーション介入効果の検討では、排泄障害を、米国消化器学会分類での排便障害無し群、便秘群、下痢群、便秘・下痢のミックス群に分けると、下痢群と、便秘・下痢のミックス群でのADL改善が有意に低いことが分かった。中間解析結果は2021年日本老年医学会にて学会発表を行い、論文執筆中である。 本研究において、老年症候群をさまざまな角度から検討し、リハビリテーション医学に応用することで、高齢者の生命予後だけでなく、ADL、Quolity of lifeの改善につながり、ひいては医療費、介護保険費用の軽減につながる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脆弱性骨折後の嚥下障害発生状況調査と、言語聴覚士介入の有用性についての検討を行った。目標症例数1000人に対し、現時点で約800症例の登録を行った。4年間の研究期間中の始めの2年間で、目標症例の登録が終了し、3年目、4年目でこれらの症例に対し追跡調査を行う予定である。現時点での解析では、脆弱性骨折発症後の入院期間中に肺炎を5.8%の症例で発症し、肺炎に対するリスク因子として、男性であることOdds ratio (OR) 4.02 (95%CI:1.45-10.87, P =0.006)、副菜の種類(形態)が低いこと(常菜:OR 1)、キザミ食:OR 7.55 (95%CI 1.38-41.30,P =0.020)、ミキサー食/経管栄養:OR12.57 (95%CI 1.118-141.27, P =0.040)があることが分かった。2022年6月に日本老年医学会学術集会のシンポジウムで発表予定である。また、脆弱性骨折と嚥下障害に関するreview論文を執筆中である。 同時に、同じ800症例に対して脆弱性骨折後のポリファーマシーがリハビリテーションに及ぼす影響についての検討を行っている。中間解析にて、骨粗鬆症薬投与群のほうが非投与群に比べ有意にADLが改善していることを明らかにし、英文誌に掲載された。 脳血管障害、骨折患者の排泄障害とリハビリテーション介入効果の検討については予定800症例の登録であるところを、現時点で280症例の登録が済んでおり、初年度としては順調に進んでいる。現時点での解析では、排泄障害を、米国消化器学会分類での排便障害無し群、便秘群、下痢群、便秘・下痢のミックス群に分けると、下痢群と、便秘・下痢のミックス群でのADL改善が有意に低いことが分かった。中間解析結果は2021年日本老年医学会にて学会発表を行い、論文執筆中である。さらに症例を増やして検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で研究の進捗は順調である。脆弱性骨折後の嚥下障害発生状況調査と、言語聴覚士介入の有用性についての検討では4年間の研究期間で、1000症例の登録と追跡調査を行う予定であるが、すでに800症例の登録が終了し、追跡調査中である。中間解析でも、期待していた結果が出ている。2022年6月に日本老年医学会学術集会のシンポジウムで発表予定である。また、脆弱性骨折と嚥下障害に関するreview論文を執筆中である。 脆弱性骨折後のポリファーマシーがリハビリテーションに及ぼす影響についての検討では上記と同じ症例での検討であるため、症例登録は順調に進んでいる。中間解析での結果もすでに英語論文投稿、掲載が済んでいる。現在のペースで研究を進めれば予定していた研究目的を達成することができると考えられる。現在登録が終了している800症例について、詳細に使用薬剤を分類中である。骨粗鬆症薬だけでなく、ADLの改善に影響のある薬剤についての解析を行っている。 脳血管障害、骨折患者の排泄障害とリハビリテーション介入効果の検討については現在、280症例の登録が済んでおり、さらに症例登録を進めている。 予定していた研究計画は予定通り進捗しており、今後も現在のペースを維持して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在行っている知見が単施設だけで証明されるものでないことを証明するために多施設共同研究を計画しており、大規模臨床研究を行う予定である。しかしながら、新型コロナウイルス蔓延のため、他院に赴いて、研究調査を行うことができなかった。このため次年度使用額が生じた。すでに複数の施設からは共同研究に同意を頂いており、今年度以降で多施設共同研究を行う。次年度使用額はこの研究で使用する費用であり、症例登録に要する費用、郵送調査費用、旅費等であり、すでに使用用途が決まっている。 また、学会発表を行ったが、そのほとんどがオンライン開催となり、旅費分は使用しなかった。次年度は現地開催が多く、すでに研究内容に関するシンポジウム発表も決まっており、次年度に発表に係る旅費の使用予定である。
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