研究実績の概要 |
本研究では、がん組織の複雑性に着目し、がん間質のがん関連線維芽細胞(CAF)を中心にして、がん細胞⇔CAF、CAF⇔腫瘍浸潤リンパ球の細胞間相互作用を解析することで、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の制御機構を解明しようするものである。 本研究期間内においては、がん組織に浸潤している免疫担当細胞のうち、腫瘍関連マクロファージ(TAM)に着目して、低酸素状態によるサイトカイン Transforming growth factor-alpha (TGF-a)やTransforming growth factor-beta (TGF-b)の発現の影響を解析した。in vitroで、TAM(type2 マクロファージ)を誘導して、仮想低酸素状態のもとで培養すると、TGF-aとTGF-bのmRNAレベルでの発現が亢進すること、また、TGF-aを添加して低酸素状態で培養すると、TGF-b mRNAの発現が、さらに増強することが判明した。これらの結果については、日本人類遺伝学会 第67回・第68回大会で報告した。 また、腫瘍微小環境における抑制性の免疫応答について理解するために、非小細胞肺がんにおけるPD-L1陽性のマクロファージの分布(組織内密度)について、さらに解析を進めた。その結果、血漿中の可溶性PD-L1はPD-L1陽性のがん細胞だけでなく、PD-L1陽性のマクロファージに由来していることが示唆された。また、がん組織おけるPD-L1陽性のマクロファージの密度が高く、血漿中の可溶性PD-L1濃度が高い群では、手術後の予後である(無再発生存率が低い)ことが判明した。これらの結果をまとめて論文報告(Cancer immunology, Immunotherapy, 72(11), 3755-3764, 2023)した。
|