研究課題/領域番号 |
21K07320
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田崎 雅義 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (50613402)
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研究分担者 |
水口 峰之 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (30332662)
植田 光晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60452885)
宮本 健史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70383768)
大林 光念 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (90361899)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / 変形性膝関節症 / 老化 / 新型アミロイド |
研究実績の概要 |
アミロイドーシスは可溶性の蛋白質が諸臓器に沈着することで臓器障害を引き起こす疾患群の総称である。これまでに36種類以上のアミロイドを形成する蛋白質が報告されているが、未だ原因タンパク質の同定に至っていないものも存在する。我々は、変形性膝関節症患者の病理組織において、既報告のいずれのタイプにも属さない新型アミロイドを見出しつつある。 本研究では、新型アミロイドーシスの実態を明らかにし、病態解明や検査法の開発に繋げることを目的とし、実施する。 研究計画1年目にあたる2021年度は、以下の点を明らかにした。(1)新型アミロイドの沈着部位を質量分析装置で解析した結果、新型アミロイド群では、新型アミロイドの主成分と考えられる蛋白質を全例で同定できた。(2)市販の新型アミロイド蛋白質に対する抗体を用いて免疫組織化学染色を施行した結果、染色性が必ずしも良好ではない症例が存在した。そのため、新型アミロイド蛋白質に対する抗体を作成し、検討したところ良好な染色性を示す症例を認めた。(3)作成したリコンビナント新型アミロイド蛋白質を用いてアミロイド線維形成実験を行った結果、電子顕微鏡で線維様構造物を確認することができた。(4)新型アミロイドを全身臓器で探索する中で、副産物としてEFEMP1アミロイドを消化管の隆起病変で発見したため国際英文誌報告した(Tasaki et al., Pathol Int.2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、新型アミロイドーシスの病態が少しずつ明らかとなりつつある。以下に具体的な進捗状況を示す。(1)新型アミロイドの沈着部位および非沈着部位の構成成分を質量分析法により比較解析した結果、新型アミロイド沈着部位群では、アミロイドの主成分と思われる蛋白質を解析した全例で同定できた。一方で、非沈着部位では本蛋白質は検出されなかった。また、新型アミロイドの沈着部位では、アミロイドに共存することが知られているapolipoprotein E, clusterinなども検出された。(2)市販の新型アミロイド蛋白質に対する抗体を用いて免疫組織化学染色を施行した結果、染色性が必ずしも良好ではない症例が存在した。そのため、新型アミロイド蛋白質に対する抗体を作成し、免疫組織化学染色を施行したところ、良好な染色性を示す症例が認められた。(3)作成したリコンビナント新型アミロイド蛋白質を用いて、in vitroにおけるアミロイド線維形成実験を行った結果、電子顕微鏡で線維様構造物を確認することができた。(4)新型アミロイドを全身諸臓器で探索する中で、副産物としてEFEMP1アミロイドを高齢患者の消化管隆起病変で発見したため国際英文誌報告した(Tasaki et al., Pathol Int.2022)。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の2年目にあたる2022年度は、前年度に引き続き、病理学的解析および生化学的解析を実施する。具体的には以下の研究に取り組む。(1)新型アミロイドの全身分布を病理学的に評価する。(2)新型アミロイドの病理的検査法を確立するために、作成した抗体を用いて、様々な染色条件下での免疫組織化学染色を実施し、最適な染色条件を探る。(3)アミロイドには全長で沈着するタイプと断片化した一部が沈着するタイプに分類されるため、本アミロイドがどちらのタイプに属するのか生化学的に解析する。(4)作製したリコンビナント蛋白質の変形性膝関節症患者由来細胞に対する影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンラインで開催され、旅費として計上していた金額の一部を使用しなかったため。また、英文校正費が想定より安価となったため。繰り越し金額は、2022年度の消耗品の購入や英文校正費、旅費に充てる。
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