研究課題/領域番号 |
21K07322
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中村 政敏 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 主任臨床検査技師 (70868512)
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研究分担者 |
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 活性化凝固第X因子阻害薬 / トロンビン阻害薬 / DOACs血中濃度 / クロスミキシングテスト / 凝固因子活性 / 凝固波形解析 |
研究実績の概要 |
実臨床においてPT (prothrombin time)、APTT (activated partial thromboplastin time) の測定値が延長している症例では、トロンビン阻害薬あるいは活性化凝固第X因子阻害薬(総称して直接経口抗凝固薬 Direct Oral Anticoagulants, DOACs 以下DOACs)を内服している可能性がある。特に、意識レベルが低く問診などで抗凝固薬内服などの服薬情報を得られない症例では、抗凝固薬服薬の有無、種類を血液検査により正確に把握することが重要である。そこで活性化凝固第X因子阻害薬内服症例におけるトロンビン阻害薬濃度の測定上の偽陽性の可能性について検証した。結果は活性化凝固第X因子阻害薬内服19症例25検体(6症例は内服前後)中、23検体に偽陽性を認めた(標準血漿の濃度は陰性であった)。この偽陽性の機序を解明するための検証の一環として、活性化凝固第Ⅹ因子阻害薬内服時の活性化凝固第X因子阻害薬血中濃度測定法の確立を目指し 、ヘパリン血中濃度測定法を改良して新たな測定系を作成した。これにより、測定系のパラメータを機器に入れることにより血液凝固自動分析装置を用いて、活性化凝固第X因子阻害薬血中濃度を正しく測定できた 。また、別の血液凝固自動分析装置を用いてトロンビン阻害薬濃度について、低濃度域と通常濃度域の2パターンで偽陽性の再現性を確認したところ、活性化凝固第X因子阻害薬内服症例について偽陽性を認め、再現性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性化凝固第X因子阻害薬内服症例におけるトロンビン阻害薬濃度の測定上の偽陽性についての研究は、概ね計画通りに順調に進展している。3年目の研究では、活性化凝固第X因子阻害薬血中濃度測定法の確立を、測定系のパラメータを機器に入れることにより血液凝固自動分析装置を用いて、活性化凝固第X因子阻害薬血中濃度を正しく測定できた 。これにより、活性化凝固第X因子阻害薬全種類(アピキサバン、リバロキサバン、エドキサバン)の血中濃度を測定できた。また、別の血液凝固自動分析装置を用いてトロンビン阻害薬濃度について、低濃度域と通常濃度域の2パターンで偽陽性の再現性を確認したところ、活性化凝固第X因子阻害薬内服症例について偽陽性を認め再現性が確認できた。4年目は、さらに凝固カスケードについての理解を深めるため、トロンビン阻害薬濃度測定上の偽陽性の機序を詳細に検討していきたい。具体的には先に挙げた各種実験、文献の検証などを通じて、凝固波形解析を用いて、視覚的にかつ数理的に捉えられるようなアルゴリズムの構築に努めていく 。
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今後の研究の推進方策 |
1点目は、in vitroによる実験のための最適な血液検体を選定した後、塩酸処理、フィルター除去、中和抗体などにより検体を処理し、調整した検体を全て測定して偽陽性の原因を推定する(血液検体は廃棄血が理想であるが、必要であれば倫理面を配慮した書類作成後、新鮮血を使用する)。 2点目はクロスミキシングテストによる解析である。凝固カスケードについて解析検討する必要があるため、凝固インヒビターや活性化凝固因子の測定を可能な限り実施する。 3点目は上記について凝固波形解析を導入し、凝固カスケードの変化を視覚的かつ数理的に考察する。 以上、3点の推進方策を遂行し、論文作成を行い、臨床へフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に発注予定であった試薬が海外受注発注品であり、納期に間に合うことができなかったので、結果的に次年度使用額が生じた。次年度は検討方法が確立したFXa阻害薬血中濃度、トロンビン阻害薬血中濃度測定試薬、クロスミキシングテスト用試薬、in vtiroで実験のための試薬購入のため、繰越金も含めて使用する計画となっている。
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