研究課題/領域番号 |
21K07324
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
柏倉 裕志 自治医科大学, 医学部, 講師 (40382890)
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研究分担者 |
大森 司 自治医科大学, 医学部, 教授 (70382843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 凝固因子測定 / 第VIII因子 / 血友病A |
研究実績の概要 |
血友病Aは血液凝固第VIII因子(FVIII)が欠乏する先天的出血性疾患である。現在様々な血友病A治療薬が開発されているが、依然として周術期や出血時にはFVIII製剤の追加投与とFVIII活性のモニタリングが必要である。現行の測定法では追加投与したFVIIIをモニタリングできない血友病A治療薬も存在し、その解決が喫緊の課題となっている。本研究では、申請者らが開発した血友病Aブタの血漿、およびブタFVIII欠乏血漿を用いたFVIII測定法を確立する。この測定法により、血友病A治療薬に左右されることのない幅広い血友病A患者を対象としたFVIII活性の測定が可能となる。 本年は、血友病Aマウスから抗ブタFVIIIモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立した。 ブタFVIIIを安定発現する細胞株を樹立し、細胞上清より濃縮ブタFVIIIタンパクを分離し、FVIII活性発現とELISAにより確認した。肝臓特異的なプロモーターの下流にブタFVIIIcDNA発現するAAVベクターを作製し、血友病Aマウスヘ投与することでブタFVIII活性を阻害する中和抗体を発現するマウス個体を得た。同様に、濃縮ブタFVIIIタンパクの投与でもブタFVIII活性を阻害する中和抗体を発現するマウス個体を得た。これらブタFVIIIに対する中和抗体を発現する血友病Aマウスの脾臓から、ハイブリドーマを作製した。スクリーニングの結果、ブタFVIIIに結合するモノクローナル抗体を産生する4種のハイブリドーマを樹立することに成功した。得られたモノクローナル抗体は、立体構造認識すると推測されるクローンを除き、A1ドメイン、a3ドメイン、Cドメインに結合すると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3-4年度に予定していた主な研究計画は、モノクローナル抗体の作製とブタFVIII欠乏血漿の作製である。 このうちモノクローナル抗体の作製については達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) ブタFVIII欠乏血漿の作製:樹立した抗ブタFVIIIモノクローナル抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより、野生型ブタ血漿からFVIIIを除去する。FVIII活性測定、さらにELISAとウエスタンブロットによる検出によって、FVIIIの欠乏および残存を確認する。 2) 血友病Aブタの産出:血友病Aブタは出血傾向が強いため維持が困難である。そのため現在はヘテロブタとして農研機構で維持している。ヘテロブタと野生型ブタとの交配により血友病Aブタを産出させ、深麻酔下でクエン酸ナトリウム採血を行い、血友病Aブタ血漿を得る。 3) ブタFVIII欠乏血漿を用いたヒトFVIII測定法の確立:前年度の実験により得られたブタFVIII欠乏血漿、または血友病Aブタ血漿を用い、エミシズマブ存在下あるいは非存在下におけるヒトFVIII活性を測定する。測定可能なFVIII活性の下限値を評価・設定し、ヒトFVIII活性測定法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力施設で維持している血友病Aブタの血漿採取は、世代交代時に産出する雄のブタからの採取を予定している。当該年度では、その作業費用等をあらかじめ確保していたが、研究協力施設では当該年度に世代交代を検討しなかった。そのため、次年度の作業費用として利用する予定である。
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