研究課題/領域番号 |
21K07326
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
三村 俊英 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30260491)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高齢発症炎症疾患 / 関節リウマチ / エピゲノム / リウマチ性多発筋痛症 |
研究実績の概要 |
令和5年度には、高齢者(70歳以上)と非高齢者(70歳未満)に分けて、関節リウマチ(RA)患者対照疾患としての変形性関節症(OA)患者の滑膜線維芽細胞におけるヒストンメチル化の程度と疾患の特徴及び活動性を確認した。今年度に紙面での同意の下に収集し得た患者滑膜組織;高齢RA =10例、非高齢 = 10例、高齢OA = 7、非高齢OA = 3。非高齢OAは患者数が少ないため、解析結果には注意を要する。 今まで確認してこなかった高齢者群と非高齢群に分けてのRAとOAとの間での比較を行い、ヒストン3の36番のリシンのジメチル化(H3K36me2)に関して、RAのみで行ってきた内容とは異なる結果を得た。解析遺伝子に関しては、RAとOA間にmRNA発現の有意差を示した遺伝子に絞って確認した。その結果の概略を以下に示す。 1)H3K36のジメチル化に関与するメチル化酵素のNSD2のmRNA発現をRAとOA間で比較したところ、RAにおいて有意に発現の亢進が認められた。このRAとOAにおけるNSD2mRNA発現量の比を、高齢者と非高齢者に分けて比較してみると、高齢者においてはRA/OA=1.33であるが、非高齢者においては、RA/OA=2.29と非高齢者群においてRAとOA間に有意な開きのあることが明らかになった。 2)H3K36me2のChIPにおいて、非高齢患者群での比較では、%INPUTにおいてRA/OAはMMP-13、IL-8、CCL2において有意にRAで高値であった。一方、高齢者群ではこれらの差は消失していた。 3)高齢RAと非高齢RA患者における、自己抗体を検討した。その結果、リウマトイド因子(RF)は高齢RAのと非高齢RAの平均値には有意差はなかった。一方、抗CCP抗体価に関しては、高齢RA(213.2)と非高齢RA(104.2)の比較では、有意差をもって高齢RA患者群で高値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年までは、同意取得患者数が比較的少なく、RAのみにおける解析が主であったが、令和5年度にはリクルートできた患者数も増え、RAとOAにおいて、高齢群と非高齢群とに分けて比較することが可能となった。この意味で、進捗はおおむね順調に進んでいると判断した。しかし、上記したように想定していなかった新たな知見が得られた。この結果が臨床的にどのような意味を持つのかをさらに検討する必要があり、次年度に本研究を延長して、epigenomeとinflammagingの関係を明らかにするという最終的な結論を得たいと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
滑膜組織を用いた、RAとOAにおける高齢群と非高齢群間でのepigeneticな比較を進めることと、この明かな差異を臨床データと付き合わせることで、inflammagingに関連する臨床的な意味を検討し、epigenomeとinflammagingの関係を明らかにすることができると考えている。患者末梢血に関しては、収集を進め、70から75例ほどになれば血中サイトカインやケモカインの測定を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
滑膜組織を用いた、RAとOAにおける高齢群と非高齢群間でのepigeneticな比較を進めることと、この明かな差異を臨床データと付き合わせることで、inflammagingに関連する臨床的な意味を検討し、epigenomeとinflammagingの関係を明らかにすることができると考え、そのために次年度に残りの検討を行う。一方、患者末梢血に関しては、収集を進めているがまだ十分ではなく、70から75例ほどになれば血中サイトカインやケモカインの測定を開始する。この測定系はキットによるシステムのため、一括して測定することで経費の縮小が可能となる。これらの研究の完了には次年度での実験が必要で、今年度使用額を抑えて次年度に実験が行えるように配慮した。
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