研究課題
高脂肪食(HFD)+八味地黄丸(HJG)混餌を与えたC57BL/6Jマウス群(HFD+HJG)はHFD摂餌群と比較して、摂餌量を変えることなく、明らかな体重増加抑制作用が認められた。HFD+HJG群の皮下脂肪、内臓脂肪といった白色脂肪の脂肪径はHFD群と比較して明らかに肥大が抑制されており、HJGには抗肥満作用があることがわかった。その条件下で、血中レプチン濃度およびFgf21濃度はHFD群で有意に上昇していたが、HJG投与でその増加が有意に抑制されていた。よってHJGは肥満時に観察されるレプチンおよびFgf21に対する抵抗性も抑制していた。興味深いことに、肝中性脂肪含量を測定したところ、HFD群で有意に増加する中性脂肪はHJG投与群では中性脂肪蓄積が抑えられており、脂肪肝の改善にもHJGが有用であることも証明できた。一方で、普通食にHJGを混合した餌(CE-2+HJG)を与えたマウスは対照群と比較して、体重変化に有意な差はなかったが、HFDと同様に白色脂肪の脂肪計の縮小を認め、白色脂肪の褐色化につながるUcp1を含めた様々な遺伝子群の発現が増加していた。以上より、HJGは肥満抑制作用と脂肪肝改善作用があり、その機序として、白色脂肪の褐色化などを介した経路が存在している可能性が見いだされた。
2: おおむね順調に進展している
今回の観察で、八味地黄丸の抗肥満作用が明確となり、さらに脂肪肝の改善作用などを見出すことができた点で、本研究は順調に進行できていると考えている。一方で八味地黄丸のレプチンおよびFgf21抵抗性の改善について、抗肥満作用に対する八味地黄丸の明確な作用機序がまだ十分に同定できたいないため、次年度以降の本研究の課題は残されている。
現在の研究内容は八味地黄丸の肥満予防効果について解析を行ってきたが、今度は高脂肪食を事前に負荷し、肥満モデルを確立した状態で八味地黄丸を投与していくことで、「肥満治療効果」を解析していく予定である。また、高脂肪食+八味地黄丸の摂餌によって、糖尿病改善作用をさらに深めて解析いくことで、八味地黄丸の新たな「抗メタボリックシンドローム作用」を見出すための研究を進めていく予定である。さらに、八味地黄丸の抗肥満作用における作用機序を明確にする予定である。現在、八味地黄丸を用いた成分の粗抽出までは完了しているが、今後はさらに、八味地黄丸の成分分離を細かく行い、細胞・分子レベルでの八味地黄丸の作用点を明確にするための準備を進めていく予定である。
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Pharmacology&Therapeutics
巻: 235 ページ: 108159~108159
10.1016/j.pharmthera.2022.108159