今年度は八味地黄丸の白色脂肪細胞への直接作用を検討するため、八味地黄丸のメタノール抽出物を酢酸エチルおよびn-ブタノール分画に分配し、それぞれを刺激した際の3T3L1脂肪細胞での脱共役蛋白1(Ucp1)の遺伝子発現を検討した。まず、分化した3T3L1脂肪細胞に直接八味地黄丸の酢酸エチル分画およびn-ブタノール分画をそれぞれ刺激したところ、Ucp1遺伝子発現に大きな影響は認められなかった。そこで、レプチン依存的な八味地黄丸の白色脂肪細胞への作用を疑似化するため、β3アドレナリン受容体刺激薬であるCL316243刺激下における各分画の処置を試みた。その結果、興味深いことに、酢酸エチル分画の前刺激がCL316243に誘導されるUcp1遺伝子発現に対して有意な変化を与えなかったが、n-ブタノール分画の前刺激下、CL316243刺激を行うと、CL316243単独刺激によるUcp1遺伝子発現の増加に加えて、更なるUcp1遺伝子発現の有意な増強を認めた。このことは、昨年度報告したレプチン依存的な八味地黄丸の作用発現において、少なくともUcp1遺伝子発現の亢進が作用機序の一端を担う可能性を示唆した結果であると考えられた。
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