研究課題
これまで原発性大結節性副腎過形成症(PMAH)症例を25家系の集積を完了している。ARMC5遺伝子の生殖細胞系variantの有無についてのサンガー法による解析が完了しておりほぼ半数の家系においてARMC5遺伝子に病的バリアントが同定されている。この中でデータベースに登録のないバリアントであるp.G143Sfs*8, p.R362Q,p.G143fs*8, c.2279_2290delを同定した。American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG)のガイドラインに照らし合わせるとこれらのバリアントはいずれもpathogenicあるいはlikely pathogenicと判定され,PMAH発症の原因となり遺伝子バリアントと考えられた。更にサンガー法にて病的バリアントが同定されなかった検体についてMLPA(Multiplex Ligase Dependent Probe Assay)法を用いてARMC5遺伝子コピー数変化の有無を検討したが、エクソン単位の欠失や重複を認めた症例は認めなかった。集積したPMAH症例の約半数の症例では副腎外の腫瘍病変(乳がん、甲状腺がん、大腸がん等)を合併しており、これらの中で手術等が行われ、組織検体が入手可能のものに関してもサンガー法によるARMC5遺伝子解析を進めているが現時点でLOH(loss of heterozygosity)などの明らかなセカンドヒットを示唆する遺伝子変異を認めていない。またPMAH患者の血縁者で協力をえられた方の解析も一部行い、ARMC5遺伝子のいわゆる「変異保因者」については将来PMAHあるいはサブクリニカルクッシング症候群などの前病態である可能性もある知見を得ている。
2: おおむね順調に進展している
Covid19パンデミックの影響で他施設からの症例集積において多少の支障をきたしているが概ね順調に進捗している。、
引き続き症例集積の努力に努めるとともに、未解析の腫瘍組織検体についてサンガー法のみならず、MLPA法による解析を進める。また近年PMAHに関与することがしめされた新たな遺伝子(KMN1A)やARMC5との関連が示唆されているMEN1遺伝子の関与についても解析を広げることを予定している。PMAH患者の血縁者についても一部解析が進行中であり、いわゆるARMC5遺伝子変異の「保因者」の臨床病態を明らかにしたい。これらの研究はPMAHをARMC5遺伝子異常症として位置付けて、その病態を明らかにするとともに臨床現場への還元を視野に入れて、「保因者」のサーベイランスのあるべきプロトコールの作成につながるような研究を目指している。
Covid19パンデミックに伴う勤務環境への影響や研究室の移動に伴い研究活動を短期間中断せざるを得ない期間があったため。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件)
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