研究課題/領域番号 |
21K07335
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊 敏 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40292007)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / NASH / ヨモギ / 肝細胞死 / アポトーシス / 小胞体ストレス / マウス |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患において肝細胞死は単純性脂肪肝から脂肪性肝炎発症の引き金になるため、肝細胞死の研究は極めて重要である。そこで、令和4年度に主に遊離脂肪酸負荷による肝細胞死の様式および薬用植物ヨモギの肝細胞保護作用について検討した。in vitroではマウス肝細胞株Hape1-6を飽和脂肪酸パルミチン酸で刺激すると、肝細胞アポトーシスが誘導される。遺伝子レベルおよび蛋白質レベルでの解析により小胞体ストレス関連分子(CHOP、JNKリン酸化など)および酸化ストレスマーカー(CYP2E、8-OHdGなど)の発現が有意に増加し、肝細胞アポトーシスに寄与することを示した。ヨモギ (Artemisia princeps Pampanini)の水抽出物で処理したHape1-6細胞では強力な抗酸化活性を有するHO-1分子が誘導され、肝細胞アポトーシスが軽減された。よって、ヨモギは酸化ストレスを抑制することによって肝細胞を保護する作用を示した。現在、ヨモギの小胞体ストレスへの作用は検討中である。一方、パルミチン酸負荷による肝細胞脂肪蓄積におけるヨモギの作用は確認されなかった。 また、令和3年度開始した動物実験では、ヨモギ水抽出物を2%で混合した高脂肪食を摂取しマウスに比較し、ヨモギ水抽出物を5%で混合した高脂肪食を摂取しマウスの肝臓では脂肪蓄積や炎症反応が顕著に改善された。 これらの成果は、脂肪性肝炎発症の引き金となる肝細胞死に小胞体ストレスおよび酸化ストレスが寄与することを明らかにした。さらに、ヨモギは脂肪毒性を軽減することにより肝保護的に働く効能を有し、創薬資源として利用する科学的な根拠を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヨモギの抽出は担当者の変更により、実験は計画よりやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
今後計画通りに研究を進める予定である。パルミチン酸による肝細胞アポトーシスのメカニズムを引き続き解析するとともに、他の脂肪酸による肝細胞死をも検討して比較する。また、ヨモギの肝細胞保護作用を抗脂肪毒性、抗炎症効能の両面から解析する。in vivoでは、現在進行中の非アルコール性脂肪性肝疾患モデルマウスを用いて肝細胞死関連遺伝子の解析およびヨモギの肝臓保護作用を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に研究器械セルカウンターCellDrop FL (De Novix社)を購入する予定だったが、他研究室より借りることができたため、助成金の一部は次年度以後に繰り越した。令和5年度に網羅的遺伝子発現解析に使用する予定である。
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