研究課題
本研究は、2021年度~2024年度までの4 年間で、これまで一貫して小径線維ニューロパチーの研究を継続してきた申請者が、その集大成として人工知能の導入や新規生化学的指標の探索・同定を行い、最終的に「『特発性』と診断せざるを得ない症例を極力減らし、大多数の患者を至適治療に導く小径線維ニューロパチーの診断アルゴリズム作成」を目指すものである。初年度である2021年度には、主に人工知能による皮神経に着目した病理組織学的診断の迅速化の準備に向けた取り組みを行った。各種小径線維ニューロパチー患者、および健常者と判定された被験者双方の生検皮膚組織に関する蛍光鏡見所見を全て画像としてAIに記憶させ、神経密度や三次元的な神経分岐角度の比較を基に、AI による迅速かつ高精度な小径線維ニューロパチーの病理診断システムの構築を目指している。また、本研究のもう一つの目標であるサルコイドーシスや線維筋痛症をターゲットとした、小径線維ニューロパチーにおける新規生化学的指標の探索についても、次年度からの検討を目指し、対象患者の選定に着手したところである。こちらは、今後特発性小径線維ニューロパチーとの診断に留まっている患者を対象に、従来からサルコイドーシスのバイオマーカーとされてきた血清ACE値や血清可溶性IL-2レセプター値の他、血漿エクソソーム由来の各種miRNA発現量や島領域グルタミン酸濃度のチェックを行い、これら各々の値と我々がこれまでに確立した生理学的診断システム(Aδ線維特異的痛覚閾値+レーザードプラ皮膚血流検査による血管運動神経(=C線維)機能の評価)で得られた小径線維の障害度との相関を検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度である2021年度に計画していた研究については、概ね順調に遂行できた。
2021年度に蛍光鏡見所見を画像としてAIに記憶させた小径線維ニューロパチー例は、全研究期間での見込み症例数900例の約1/3にあたる303例であった。今後は、この検討を見込み症例数900例に届くまで継続し、結果をもとにシステム化したうえで、AI診断率80-95%を目標値に設定してその有用性を検討していく。さらに、本研究のもう一つの目標であるサルコイドーシスや線維筋痛症をターゲットとした、小径線維ニューロパチーにおける新規生化学的指標の探索についても継続して行い、そのデータについてもAI診断システムに加え、活かしていく。
初年度の研究においては、過去に検討済みの病理組織学的診断所見をAIに記憶させる作業、および次年度以降に本格的に検討していく予定の新規生化学的指標の探索についての対象患者の選定が主な活動であったことから、当初の見込みより物品費が次年度に繰り越される結果となった。ただし、次年度には新規の病理組織学的診断、ならびに血清ACE値や血清可溶性IL-2レセプター値、血漿エクソソーム由来の各種miRNA発現量や島領域グルタミン酸濃度のチェックを大量に行うことが確実であり、今年度の繰り越し分は次年度に(当該年度分と合わせて)全て使用される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Ageing Research Reviews
巻: 70 ページ: E-Pub
10.1016/j.arr.2021.101388
Amyloid
巻: 28 ページ: 107-112
10.1080/13506129.2020.1858404