研究課題/領域番号 |
21K07350
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石井 直仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80212819)
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研究分担者 |
横場 正典 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80316942)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症診断法 / 酸化ストレス / 尿中ミトコンドリアタンパク質 / ミトコンドリア / マイトファジー / 脂肪酸代謝 / リソソーム / リソファジー |
研究実績の概要 |
腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレスマーカーの3-nitrotyrosine生成亢進とミトコンドリアのニトロ化タンパク質同定により、ミトコンドリアは酸化ストレス障害を受けていることを示した。損傷ミトコンドリア蓄積は、細胞障害の原因となる可能性があり、腎機能障害を防ぐためには、損傷ミトコンドリアを分解・除去しなければならない。腎症発症前の糖尿病ラットの腎皮質において、損傷ミトコンドリアを選択的に分解・除去するマイトファジーの誘導とミトコンドリアタンパク質が尿中に排泄されることを示した。また、尿中で分解不全なミトコンドリアタンパク質が検出されたことから、マイトファジーに関わるリソソームの損傷(不全)とリソソームを選択的に隔離、修復するリソファジーの誘導が予測された。ミトコンドリアとリソソームの機能低下は、糖尿病性腎症発症・進展の一端を担っており、これらの機能評価は、腎機能評価に繋がると考える。 目的は、糖尿病性腎症の早期診断マーカーとして糖尿病で損傷したミトコンドリアとリソソームの品質管理システム(マイトファジー、リソファジー)と尿中への分解・排泄メカニズムを明らかにし、糖尿病性腎症の早期診断法を確立することである。本年度の研究概要は以下である。 1.動物実験 尿中ミトコンドリアタンパク質の排泄に関わるマイトファジー解析の一環として、マイトファジー亢進と共に1)ミトコンドリアでのエネルギー生成を担う脂肪酸代謝は、ω6脂肪酸からω3脂肪酸(抗酸化・血管保護作用)への脂肪酸代謝シフトが示された。2) 脂肪酸のミトコンドリア内膜透過を担うアシルカルニチンは高値を示した。3) リソソームの品質管理システムであるリソファジーとリソソーム修復は、亢進傾向を示した。 2.臨床研究 研究対象者を「慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)」により分類した4群の患者尿検体採取・分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に想定した研究目的の進捗状況は、「動物実験」ではおおむね順調に進展しているものの「臨床研究」ではやや遅れている。 1.動物実験 腎症発症前糖尿病(2週間)ラットの腎皮質において、①ミトコンドリアでのエネルギー生成を担う脂肪酸代謝は、ω3脂肪酸(α-リノレン酸, EPA, DHA)とω6脂肪酸(リノール酸, アラキドン酸)を測定した。ω3/ω6脂肪酸比(脂肪酸摂取量補正)は高値を示し、抗酸化効果により抑制された。ω6脂肪酸からω3脂肪酸(抗酸化・血管保護作用)への脂肪酸代謝シフトが示された。②脂肪酸のミトコンドリア内膜透過を担うアシルカルニチンは高値を示し、腎皮質では抗酸化効果によりさらに増加した。③リソソームの品質管理システムであるリソファジーの関連タンパク質(FBXO27, LAMP2)とリソソーム修復タンパク質(Gal3)の発現は、亢進傾向を示した。 2.臨床研究 患者尿検体採取・分析を進めている。また、研究対象者を「慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)」により分類した4群の患者尿検体の十分な採取のため、現協力病院に加え、新たな病院と共同研究の話し合いを進めている。2023年6月までに当大学の「研究倫理審査委員会」へ「協力病院の追加申請」ができるよう準備している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、「動物実験」と「臨床研究」を並行し検討を行う予定である。 1.動物実験 1)マイトファジー分解不全尿中ミトコンドリアタンパク質の排泄パターン解析 同定された4種のミトコンドリアタンパク質(ATP5S, AK2, Cpox、TUFM)のウエスタンロッティング画像パターン解析を①腎症発症前の糖尿病(2週間)ラットと②糖尿病性腎症(糖尿病4週間)ラットにおいて引き続き行う。 2)マイトファジーに関わるリソゾームの機能解析 腎症発症前の糖尿病(2週間)ラット腎皮質において、①リソソームを選択的に分解除去するリソファジーの関連タンパク質と②リソソーム修復タンパク質のウエスタンロッティング分析と腎組織免疫染色を行う。 3) 尿中リソソームタンパク質の解析 腎症発症前の糖尿病(2週間)ラットにおいてリソソームタンパク質のプロテオーム解析を行う。 2.臨床研究 研究対象者を「慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)」により分類した4群の患者尿検体の十分な採取を現協力病院と新規協力病院において行い、尿中ミトコンドリアタンパク質排泄解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究において新型コロナ禍の影響もあり検体採取が計画通り進んでいない状況であった。各種測定項目の試薬・キットには使用期限があるため事前に多量の買い置きがでず、またその多くは高額である。未だ診療が大変な時期であるが、現協力病院と申請準備中の新規協力病院での検体採取を進めていただく。 科研費を無駄なく使用し、臨床研究の進展と成果を学会発表や論文投稿するため、補助事業期間の延長を申請し、次年度への使用額を繰り越しした。
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