研究課題/領域番号 |
21K07356
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小島 淳 熊本大学, 病院, 客員教授 (50363528)
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研究分担者 |
小島 知子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (80281137)
松井 邦彦 熊本大学, 病院, 教授 (80314201)
道川 武紘 東邦大学, 医学部, 講師 (80594853)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粒子状物質 / PM2.5 / 急性心筋梗塞 / 院外心停止 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、粒子状物質である黄砂やPM2.5の観測データをもとにその汚染状況を確認し、急性心筋梗塞(AMI)や院外心原性心停止、脳卒中といった循環器系疾患発症のみならず呼吸器系疾患や悪性新生物による死亡との関係について疫学的評価を行い、粒子状物質が人体に及ぼす短期曝露に関する影響を明らかにすること、疾患別による粒子状物質の臨界値を定めることである。また粒子状物質の構成成分の解析結果から疾患発症のメカニズムについて検討することである。 AMIや院外心停止発症にPM2.5以外の環境因子などが影響する可能性について、2016年4月に発生した熊本地震とAMI発症との関係について、分割時系列解析を用いて検討した。2013年から2019年まで熊本県内ではAMI患者連続6553人が発症した。2016年4月中にAMIを発症した74人の患者は解析から除外し、6479人の患者(男性4646人、女性1833人)を対象とした。熊本地震前は2978人、震災後3501人であった。震災後のAMI発症リスク比(RR)は震災前と比較して1.12(95%信頼区間[CI]:1.00-1.25)と上昇し、糖尿病(RR:1.20, 95%CI:1.01-1.44)、喫煙(RR:1.27, 95%CI:1.03-1.56)、肥満25kg/m2以上(RR: 1.27, 95%CI:1.06-1.52)を有する患者で震災後に有意に増加していた。熊本県では、地震後にAMI患者数が大幅に増加し、月間のAMI発症率は12%増加しており、これは、震災後1年間で100人のAMI患者が増加したことに相当した。またAMIの危険因子である糖尿病、喫煙、肥満の頻度も有意に増加し、その割合は20%以上であることも判明した。粒子状物質と循環器救急疾患との関係を検討する場合、地震などの災害の影響にも配慮する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PM2.5のどのような成分が急性心筋梗塞や院外心停止に影響するのかについて検討を行っている。現在PM2.5成分濃度については、主に環境省による全国10地点における成分自動測定データ(ACSA-14)を用いているが、推計した日平均の質量濃度(PM2.5とPM10-2.5)や成分濃度(黒色炭素、硝酸イオン、硫酸イオンなど)に、交絡となり得る気象要因(気温や湿度、気圧他)などを合わせて大気環境データとして抽出している。また循環器疾患データは循環器疾患診療実態調査から、院外心停止データについては総務省消防庁のウツタインデータから抽出するため、日本循環器学会などに使用申請を毎年行っている。循環器疾患診療実態調査については最近データが送られてきたため、現在データセットを作成中である。またウツタインデータについては2005年~2021年までのデータが近日中に送られてくる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4~5年度にかけて、粒子状物質の質量濃度以外に、水素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、水溶性有機化合物、アンモニウムイオン、光学的ブラックカーボン濃度を測定し、化学成分の寄与度合や含有水分量の推定を行い、大気環境データと疾病アウトカムデータを突合した解析データを使用して疾患に関係する成分を見出す。さらに発症のメカニズムについて考察する。その上で、これまでに報告されているような地域間での関連性の違いが観察されるのであれば、その原因の解明を試みる。 研究代表者と研究分担者が、学会発表を行い論文化を進めていくとともに、令和5年度は本研究の総括として、粒子状物質に関する疫学から病態発症のメカニズムに至るまで、研究結果を体系的にまとめ仕上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会などの参加のための旅費として確保していたが、コロナ禍により中止になったりweb開催になるなどして、旅費を使用できなかった。特に海外の学会には参加できなかった。今後は国内外ともに、学会などが現地開催、現地参加になっていくと考えられるため、翌年分として請求する助成金にあわせる予定である。
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